Interview

「時代の要請」に応え続ける助成事業を

“産”のニーズを“学”へ、“学”のシーズを“産”へ ― 橋渡しが財団のつとめ

公益財団法人 天田財団 代表理事理事長 末岡 愼弘 氏

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画像:「時代の要請」に応え続ける助成事業を末岡愼弘(すえおかちかひろ)氏

公益財団法人天田財団は、4月21日の理事会で、代表理事理事長を務めていた岡本満夫氏(㈱アマダ取締役相談役)が退任し、末岡愼弘(すえおかちかひろ)氏(前職業訓練法人アマダスクール理事長)が新代表理事理事長に就任することを決定した。

天田財団は1987年、㈱アマダの創業者であり、当時同社会長の天田勇氏が設立代表者となり「財団法人天田金属加工機械技術振興財団」として設立された。設立以来、金属等の塑性加工分野における機械・加工システム技術に関する研究開発助成事業、ならびにその普及啓発事業を通じて、塑性加工機械に関する技術の向上をはかり、広く金属加工業界および経済の発展に寄与することを目的に活動してきた。

2007年からは、時代のニーズに合わせて研究開発助成の対象をレーザプロセッシング分野へと拡大したほか、2011年には公益認定を受け「公益財団法人天田財団」へと名称を変更した。2019年度は助成件数が129件、助成金総額が2億6,490万円で過去最高となった。これにより、1987年の財団設立以来32年間で累計助成件数は1,837件、助成金総額は29億6,398万円となった。

また、2019年度10月より「金属等の加工業に従事する人材の育成と技能の向上に有益な資格の取得に対する助成」を公益目的事業に加え、国家検定である「技能検定(工場板金)」の受検手数料の助成を開始した。

6代目理事長に就任した末岡代表理事理事長に、これからの財団の活動について話を聞いた。

「創造は未来を開く」

― 天田財団の代表理事理事長に就任するにあたり、抱負をお聞かせください。

末岡愼弘代表理事理事長(以下、姓のみ) 助成という公益事業をとおして「ものづくり立国日本」を支える天田財団のかじ取り役を拝命し、その職責の重さに身の引き締まる思いです。

私は2015年12月から、職業訓練法人アマダスクールの4代目理事長として、日本の製造業の未来を担う中小企業の後継者育成と、そこで働く従業員のみなさまを対象に、板金加工の技術革新に対応した技能教育・人材育成に努めてきました。これからは、金属等の加工に関する学術の振興と、それら知見を製品として具現化する製造現場の技能者育成に、助成という公益事業をとおして尽力していきます。

年初より、新型コロナウイルスの感染拡大が、日本の研究・教育現場や製造業にも大きな影響を与えています。こんな時こそ、「民による公益の増進」を目的とした公益財団が、より積極的に社会貢献をすべきと考えています。

歴代の理事長 ― 中でも㈱アマダの創業者であり当財団の設立代表者でもある天田勇氏の「創造は未来を開く」という言葉に立脚して、科学技術の振興や産業界の発展に少しでも貢献したいと思っています。

  • 画像:「時代の要請」に応え続ける助成事業を「2019年度 天田財団助成式典」の会場。助成金目録贈呈式や招待講演、懇親会が催された
  • 画像:「時代の要請」に応え続ける助成事業を第17回 塑性加工 助成研究成果発表会」の様子。日本塑性加工学会の春季講演会と同時開催された

コロナ禍でも助成規模は維持

― 天田財団の助成事業の原資は、財団が保有する㈱アマダの株式に対する配当金です。コロナ禍で減配の可能性もあると思いますが、助成活動への影響はありますか。

末岡 新型コロナウイルスの感染拡大にともなう経済的なダメージはリーマンショックを超えるといわれています。アマダも例外ではなく、今期(2021年3月期)の業績は大幅に下振れする見込みで、株式配当も減ることが予想されます。

だからといって助成金額を大きく減らすことは、研究者のモチベーションを下げることにつながります。さいわい長年の蓄積で、一般企業の内部留保にあたる保有資金がありますから、本年度も前年度と同レベル ― 2億4,000万円規模の助成を維持しながら様子を見たいと思います。

ただ、本年度は国際会議等の中止が相次ぎ、国際交流助成は激減するため、その分を研究開発助成に振り向けるといった調整は検討しないといけないと考えています。

つづきは本誌2020年7月号でご購読下さい。

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