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子どもたちに「モノづくりの楽しさ」を体験させよう

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夏休みのあいだ、各交通機関では旅行に出かける家族や田舎のおじいちゃん、おばあちゃんの家に帰省する子どもたちで賑わいを見せていた。

その一方で、次世代を担う子どもたちにモノづくりの楽しさ、大切さを知ってもらうためのイベント ― モノづくり体験教室―が全国各地で開催された。主催するのは行政、科学博物館、公益法人、製造業関連の各種団体など様々である。

一般社団法人日本塑性加工学会の関西支部も8月、塑性加工の魅力を子どもたちに伝える活動として『「プレス機」を使って金属を曲げてみよう!』というテーマで「青少年のための科学の祭典大阪大会2017 サイエンス・フェスタ」へブース出展を行った。

「薄い金属・細長い金属は曲がる」というイメージから「厚い金属も曲がる」という実演を通して実験を行い、「金属は壊れずに形を変えることで曲がる」「金属の種類によって形の変わりやすさが違う」ことを体験してもらう。この金属の「カタチを変える性質」を使って、どのように製品がつくられるのか、映像を見てもらい、子どもたちの夏休みの自由研究のテーマにしてもらっていた。

最近は全国の板金工場でも、地域の子どもたちを社会見学の一環で工場に招待し、例えばレーザ加工を見学してもらい、ビームで金属が切断できるプロセスを説明してモノづくり体験をしてもらう―といった工場見学会を企画する事例が増えている。

先日取材でうかがった工場には、子どもたちが工場見学の感想を綴った作文や絵が壁に貼り出され、社員や見学者に見てもらえるコーナーを設置していた。

1980年代から2010年代初期に「ゆとり教育」が行われ、少子化の影響もあってか若年層の理科離れが進み、「製造業に若者が来ない」と叫ばれ、「このままでは日本のモノづくりが危ない」という危機感が理工系の研究者や中小企業の経営者の間で拡がっていった。そんな背景もあって、子どもたちにモノづくりの楽しさを体験してもらうイベントが企画されるようになった。

こうした地道な努力の成果もあるのかもしれないが、最近訪問する大学では工学部の実習工場が充実し、工学専攻の学生全員が汎用旋盤を使った加工から、CAD/CAMの操作などを必須で実習するようになっている。

実習をしている学生に話を聞いても、「CADでモデルをつくることも楽しいが、そのモデルどおりの製品を機械で加工し、組み立てる工程が楽しい」という声が聞かれるようになり、喜ばしいと感じている。

私事で恐縮だが、郷里の80歳ちかい叔父が、地元のボランティアが運営する「おもちゃ病院」の院長をやっている。企業をリタイアした70代、80代のエンジニアが、「おもちゃのお医者さん」になって、地域の子どもたちから持ち込まれたおもちゃを修理して再生させ、喜ばれている。

「最近はマイコンなどのハイテク部品で制御されるおもちゃが多いので、修理も大変。自分たちも最新の制御技術を学び直しながら修理している」「生きがいのひとつ」と、叔父は語っていた。

夏休みには市や企業の協賛を受け、「親子おもちゃ教室」を主催、マイコン制御で動く自作のおもちゃの製作体験教室を通じて、親子でモノづくりの楽しさを感じてもらっているという。

こうした地道な取り組みが、子どもたちの科学技術への興味を育み、日本のモノづくり力を支える技術者教育に貢献していると感じています。

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