板金論壇

日本のモノづくりの危機

「成長と分配の好循環」を実現する戦略立案を

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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中小企業数は一貫して減少傾向

最近、日本のモノづくりの危機が盛んに言われている。中でも日本経済を支えてきた中小企業の疲弊が問題となっている。「中小企業白書」を読むと、中小企業が抱える実態の厳しさを改めて認識させてくれる。

現在、日本に存在する380万社(者)の中小企業は、地域の経済社会・雇用を支える存在として重要な役割を果たすとともに、将来の日本を牽引する企業に成長する可能性を秘めている。1986年以降、人口減少に伴う国内需要の減少や生産の海外移転などの経営環境の変化によって、中小企業の企業数は大きく減少している。

中小企業は、1981年から1986年にかけては年平均0.3%で増加していたが、1986年以降、一貫して減少傾向。特に、2006年から2009年にかけては、2008年のリーマン・ショックの影響もあり、年平均3.6%で減少している。また、2009年から2012年にかけては、2011年に発生した東日本大震災の影響もあり、年平均3.3%で減少している。今後は、経営者の高齢化や事業継承者の不在、人口の減少による需要の減少により、ますます減ると想定されている。

仮に、3.3%ずつ企業数が減っていった場合、20年後には中小企業の数は現在の約半分となる。そのため、白書では「中小企業に対する支援や、起業・創業の活性化、円滑な事業承継支援などが今後ますます必要となる」と指摘している。

“リショアリング”の北米もスキルが消えて困惑

米国製造業の実態に詳しい大手企業の経営者は「製造回帰で米国の製造業は活況を取り戻したようにいわれているが、実はスキルを備えた作業者がいなくなってしまって、円滑な運用ができなくなっている。もともと米国はエンジニアとワーカーとの間で職務分掌が決まっていて、ワーカーは指示された仕事をマニュアルに従ってこなすことが本来の仕事。そのため、現場を知らないエンジニアが作成したデータと、経験のないワーカーでモノづくりを行うことによって不良品や手戻りが発生、製造現場は効率よく回っていない。リショアリングによって米国製造業のスキルが失われてしまった印象を受けた」と話されていた。

また「この現実を“他山の石”として、日本の製造業も技術伝承や技術を備えた中小企業を残す努力をしないと、いつか同じ道を歩むことになる。自由競争原理だけでは割り切れない、日本の課題が見えてきた」とも話していた。

つづきは本誌2016年8月号でご購読下さい。

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