ホームドア製作にファイバーレーザ溶接を適用
FLW-3000ENSISで工期短縮・高品質加工を実現
株式会社 高村興業所
ホームドアの溶接作業前の段取り作業。ホームドアの部材がセットされているのはデメラー社の治具テーブル
市場拡大が期待されるホームドアビジネス
髙村隆晴社長
近年、鉄道駅へのホームドアの導入が鉄道事業者の間で進んできた。
国土交通省は、1日あたり利用者数が10万人以上の251駅でホームドアの整備を急ぐ方針だ。しかし、構造上の制約など、ホームドアの設置が容易でない駅が多いのも事実で、対象となる駅のうち30%程度にしか設置されていない。国交省の調査では、2018年3月末現在でホームドアの設置が終了した鉄道駅は725駅であり、本格的な普及はこれからというのが実態だ。
一般に、上下線が止まる1本のホームにホームドアを設置する場合、設置費用は4億~10億円かかるとされる。首都圏のようにホームの本数が多い鉄道駅では設置費用はさらに増大する。安全で快適な鉄道網の実現にはホームドアの普及促進が不可欠だが、設置ペースを加速するためには、ホームドアの重量や設置費用などの課題を乗り越えなければならない。
ホームドアを構成する部材は、戸袋と扉に集約され、そこには多くの板金部材が使われている。さらに、強化ガラスや不燃性ポリカーボネートなどが用いられる。戸袋や扉の枠組みの多くは板金部材で構成されており、ホームドアに占める板金部品の割合は50%以上と高い。それだけに板金業界では、これから10年は続くといわれるホームドアビジネスに乗り遅れまいと、ホームドア市場の開拓に乗り出す企業も多い。
しかし、ホームドアの戸袋・扉には既設プラットホームへの荷重を軽減するために、主構造部材に高張力アルミ合金などが採用される場合がある。その一方で、ホーム上の乗降客の群集荷重を十分考慮した強靱設計が求められるとともに、時速100㎞以上のスピードで通過する電車に対応するため、秒速50m以上の風圧に耐える強度が求められる。さらに、現地での据付時間短縮のため、人手による中間組立品の搬送・再組立・据付が簡単にできる構造としなければならず、できる限り溶接レス構造を採用、溶接自体も簡便に行える工法を採用する必要がある。
走行台車を使い、長さ2m超えのホームドアパネル材の共付け溶接も数分で終わる
重ね隅肉継手フィラー溶接を行った箇所の仕上がりがきれい
ホームドアの受注が好調
ホームドア分野の仕事に関して、㈱高村興業所は今年春以降、得意先の要求に応じられないほどの引合いを抱え、2018年下期以降は売上構成でも約20%を占めるほどに受注は好調だ。
好調な要因としては、今年2月に導入したファイバーレーザ溶接システムFLW-3000ENSISを活用した接合の合理化による工期短縮と、品質面での信頼性向上が挙げられる。ホームドアのような製造から組立までセット受注する仕事は、同社の設備力をいかんなく発揮することができる。
髙村隆晴社長は「ポスト五輪の需要の落ち込みや国内総人口の減少による国内市場の縮小など、われわれにとっては楽観視できない課題があります。モノづくりの環境は変化するのが常。板金業界では年商10億円以上、従業員規模80名前後の企業でないと生き残るのがきびしくなるという不安があります。そのなかで『自社の事業ドメインは何か』『どの分野で生き残りをかけていくのか』と模索し続けていくと、当社の体質によくフィットしているホームドアの仕事には期待が持てます」と語る。
ウイービングスポット溶接を行った補強箇所(せん断強度は8.9kN)
FLW-3000ENSISは高反射材である銅の厚板の溶接にも対応できる
会社情報
- 会社名
- 株式会社 高村興業所
- 代表取締役社長
- 髙村 隆晴
- 住所
- 広島県廿日市市大野下更地1790-1
- 電話
- 0829-56-1141
- 設立
- 1961年(1949年創業)
- 従業員数
- 48名
- 業種
- 精密板金加工部品の設計・製作、機械加工部品の製作、組立など
つづきは本誌2018年12月号でご購読下さい。