研究室訪問

レーザ市場拡大に資する希土類添加サファイアレーザセラミックスの実現を目指す

理化学研究所 放射光科学研究センター 基盤開発チーム 佐藤 庸一 博士

LINEで送る
Pocket

画像:レーザ市場拡大に資する希土類添加サファイアレーザセラミックスの実現を目指す実験装置について説明する理化学研究所・佐藤庸一博士

低温高圧合成でNd添加サファイアを開発

理化学研究所 放射光科学研究センター 基盤開発チーム・佐藤庸一博士の研究テーマ「MW級高輝度希土類添加サファイアセラミックスレーザ光源の開発」が、天田財団の2025年度「重点研究開発助成(課題研究)」にレーザプロセッシング分野で採択された。

佐藤博士は2020年度にも同財団の「一般研究開発助成」に「サファイアへのNd添加による新奇高機能レーザセラミック媒質の開発研究」という研究テーマで採択されている。サファイアは非常に高い熱伝導性があり、高出力時の熱レンズ効果や耐久性に適しているという特徴を持っている。今回の研究は、2020年度の助成研究の際に確立した独自の低温高圧合成法を用いて、レーザ発振が可能なバルク形状のネオジウム(Nd)添加サファイアの開発を目指すものである。

レーザ性能の確保には高い基盤技術が必要

佐藤博士の研究の根底にあるのは「レーザ技術を社会に広く普及させ、人々の役に立つもの提供したい」という思いだ。それには佐藤博士の経歴が関係している。

佐藤博士は東京大学 工学部物理工学科で層状ペロブスカイト、東京大学大学院 工学研究科 物理工学専攻でAnthracene-PMDAなど、光機能材料・素子開発による新機能光学特性の研究に従事。1993年3月の大学院前期課程を修了後はその知見を実用分野に生かすため、㈱ファナックに入社し、レーザ加工用高出力レーザの開発・設計を担当した。そしてお客さまと関わるうちに加工精度は前提として、装置の低価格化や小型化などお客さまがレーザ加工に求める要素について考えるようになった。

「開発したレーザ装置にトラブルが起きるとお客さまの工場へ駆けつけ、復旧や原因究明、改良にあたる日々でした。設備停止は生産に直結するため、お客さまは気が気ではなかったと思います。そうした現場を見て、『完成度を高め、お客さまが安心して利用できる手離れの良い技術をつくらなければ』と考えるようになりました。ただ、要望を聞き過ぎれば開発負荷が増し、聞かなければ製品として受け入れられない ― そのバランスが難しい。最終的に『安定性能の確保には基盤技術の向上が不可欠』と考えるようになりました。その思いが今も開発の原動力となっています」と佐藤博士は振り返る。

レーザ性能向上を目指し「レーザ三要素」に立ち返って装置の構成部品を見直したが、大きな改善には至らなかった。頭を抱えていた1995年、セラミックレーザの発振に成功したという報に可能性を見出し、透明セラミックスを開発した池末明生博士を招いて、セラミックレーザの開発を開始する。しかし産業利用が見込めるほどの成果は得られず、1998年に会社から研究の打ち切りを告げられた。佐藤博士は一度炭酸ガスレーザ/YAGレーザ開発に戻るも断念できず、研究継続のため1999年に総合研究大学院大学へ入学。両立が難しいことから3カ月後にはファナックを退社し、研究者として夢を追いかける決断をした。

2002年9月に総合研究大学院大学を卒業して博士(理学)を取得。その後は2002年10月から分子科学研究所(分子研)の研究員として勤務し、2019年4月からは分子研にも籍を置いたまま本務先を理化学研究所(理研)に移し、レーザ性能を飛躍的に高めるための要素技術開発に取り組んでいる。

画像:レーザ市場拡大に資する希土類添加サファイアレーザセラミックスの実現を目指す左:液相状態の材料に強い磁場を加えることで、異方性結晶の結晶軸を同一方向に制御する/右:佐藤博士らがこれまでに作成したNd:YAGセラミックスと配向制御FAPセラミックスのサンプルなど

つづきは本誌2026年11月号でご購読下さい。

LINEで送る
Pocket

関連記事

研究室訪問記事一覧はこちらから