再エネ普及に欠かせない蓄電池需要に期待
今年2月に閣議決定された第7次エネルギー基本計画では、2040年度の発電電力量が1.1~1.2兆kWh程度と、2023年度に比べて2割程度増えると想定している。
2040年度の電源構成については、①再生可能エネルギー(再エネ)の割合を4~5割程度、②火力を3~4割程度、③原子力を2割程度として、初めて再エネを最大電源と位置づけた。再エネの内訳としては、太陽光が23~29%程度、風力が4~8%程度、水力が8~10%程度、地熱が1~2%、バイオマスが5~6%程度とされている。
太陽光や風力などの発電量は天候や時間帯によって変動するため、需要と供給のバランスが崩れやすい。発電量が不安定な再エネが拡大し、発電量と使用量のバランスが崩れると、大規模停電を引き起こす可能性がある。そのため、出力制御によって電力の需給バランスを調整し、発電された貴重な電力が放電によって無駄に捨てられている。
そこで注目されているのが、発電した電力を蓄え、需要に応じて放電する蓄電池。電力安定供給の調整弁として期待と需要が高まっている。
新聞報道によれば、米テスラは、日本全国で小型蓄電所をまとめて管理する仮想発電所(VPP)事業を始める。各所の蓄電所を一括管理することで、再エネの発電量が多いときに充電し、電力需要が高いときに放電する調整役として、新たなビジネスを展開するという。
また、NTTは2025年度にも仮想発電所(VPP)事業に参入する。全都道府県に計約7,000カ所ある通信施設を有効利用し、蓄電池を順次設置していく。太陽光発電などの再エネを地産地消する分散型電源を整え、大規模な地震や台風が起きた際も家庭に電気を安定供給できるようにする。
タイのエネルギー大手の日本法人、バンプージャパンは「遠野松崎蓄電所」(岩手県遠野市)を開設、東北電力ネットワークの電力網と接続した。2028年には福島県にも設置する。
電気事業法では、発送電分離の原則によって、「蓄電所」は「発電所」と位置づけられるため、発電会社しか認めていない。そのため、出力制御を行うことができる送電会社が、各地にでき始めた蓄電所と手を組み、さらなる再エネ普及のために合従連衡を進めるようになっている。
蓄電池事業を手がけるパワーエックスは、畜電池を積んだ電気運搬船を建造し、2027年度中にも就航させると発表した。これにより太陽光発電の余剰電力を離島へ送電できるほか、海底送電用ケーブルの設置が難しい場所にも洋上風力発電所を設置できるなどの効果が想定されている。
蓄電池の需要が高まれば、蓄電池を格納するための板金筐体をはじめ、新たな板金需要が生まれる可能性がある。以前、蓄電池型超急速充電器の板金試作を受注した板金工場の経営者は「板金加工の市場創造を考えたとき、電力の需給バランスの調整役として再エネの普及を後押しする蓄電池の需要拡大は無視できない。板金業界にとってもビジネスチャンスとして期待している」と語っていた。
パワーエックスは蓄電池型超急速充電器などの開発・製造・販売も行う。最大出力240kWの蓄電池型超急速充電器は2つのポートを持ち、電気自動車2台同時の急速充電が可能。内蔵の蓄電池には、充電器を設置する店舗屋上に設置した太陽光パネルからの電気も使用し、充電需要の低い時間帯に電気を蓄え、充電需要が高まる時間帯に超急速充電ができるという。同社のような力を持ったスタートアップの動向もチェックする必要がある。