第37回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介
常識を疑い、常にチャレンジし続けているからこそ生まれるアイデア
「BEVEL GEAR CUBE」が「経済産業大臣賞」を受賞
株式会社 田名部製作所
「経済産業大臣賞」を受賞した㈱田名部製作所の「BEVEL GEAR CUBE」(SUS304 2B・板厚1.5㎜、W250×D250×H250㎜)
7回目の大臣賞受賞を達成
左から田名部淳社長、大城弘文さん、田川恭輔さん
「第37回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)の「組立品の部」に出品した㈱田名部製作所の「BEVEL GEAR CUBE」が、最高度な加工技術・手段の開拓など、その成果が板金業界に広く貢献すると思われる作品に贈られる「経済産業大臣賞」を受賞した。
同社が「経済産業大臣賞」を受賞するのは今回で4回目。同社では「技術の向上には他流試合が有効」という、田名部淳社長の考えにより、2003年から社員教育の一環として板金フェアの応募作品づくりにチャレンジするようになった。これまでに「厚生労働大臣賞」「経済産業大臣賞」をそれぞれ3回受賞したほか、数々の賞を受賞してきた実績を持つ。
この作品の製作を担当した特級工場板金技能士の大城弘文さんは、「8個の傘歯車が連動して動く機構の製品を見たことがあり、そのユニークな動きに目を奪われました。その機構を板金加工でアレンジしてみんなを驚かせたいと思ったのが、『BEVEL GEAR CUBE』をつくったきっかけです。8個の傘歯車を連動させるという複雑な機構と立方体というシンプルなデザインを両立させる作品を、板金加工で表現する。自身の設計力・デザイン力・展開力へのチャレンジでもありました」と語っている。
挑戦する意志と姿勢、技術・技能が融合された作品
この作品は、8個の傘歯車で構成された立方体のオブジェだ。傘歯車とは自動車のデファレンシャルギヤ(差動装置)や工作機械などで使われている円錐形の歯車。傘歯車は1個でも高度な技術が必要になるが、この作品の場合は8個の傘歯車がスムーズにかみ合う必要がある。
この作品は傘歯車を回転させると、立方体がスムーズな動きでダイナミックに変形する。その様子はまるで映画の「トランスフォーマー」の変身シーンのようで目を見張るものがある。動きをともなう一対の歯車を板金で製作するだけでも、設計・展開・切断・溶接・磨き・組立の技術と技能、そして多くの時間を要する。この作品は8個もの傘歯車が連動して動くため、どれほどの困難をともなったか、察するに余りある。チャレンジする意志と企業の姿勢、それを実現する技術と技能が融合された作品として評価された。
品質への誇りを象徴するさまざまな取り組み
同社は従業員数20名という規模ながら、特級工場板金技能士2名、工場板金(機械板金作業)の一級工場板金技能士5名、二級工場板金技能士3名、工場板金(数値制御タレットパンチプレス板金作業)の一級工場板金技能士5名、板金図面検定の一級合格者5名、二級6名、ステンレス鋼溶接技術検定(JIS Z 3821)基本級TN-Fが3名など、多くの有資格者を擁す。複数の資格を持つ社員もいて、高度なスキルを備えた技能者集団となっている。
企業理念は「喜びで繋がる 未来を支える モノづくり」。同社のWebサイトには続けてこんな一文が掲示されている ― 「私たちはお客さまの気持ちになり、お役に立つにはどうしたらよいかを一生懸命に考えます。お客さまの感動を創造するために自らを磨き、成長させる努力を続けます。お客さまの喜びが私たちの喜びとなり、新たな感動がきっと生まれる。私たちはお客さまの感動とともにこれからも成長し続けます」。こうした想いを持った社員一人ひとりの技術が、さまざまな板金製品を精密に高品質で製作するという挑戦につながっているようだ。そういった意味でも板金フェアは社員の腕試しをする絶好の機会となっている。
ファイバーレーザ複合マシンLC-2512C1AJ(2棚・TK仕様)
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会社情報
- 会社名
- 株式会社 田名部製作所
- 代表取締役会長
- 田名部 秀世
- 代表取締役社長
- 田名部 淳
- 所在地
- 福岡県筑後市大字野町327-1
- 電話
- 0942-51-7277
- 設立
- 1975年
- 従業員数
- 20名
- 主要製品
- 空調機器部品、キャビネット、農機具部品、乾燥機部品、海苔養殖機械部品、プラント部品、その他板金部品
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