特集

第35回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介(その2)

「惚れ惚れするような曲面」 ― 実物大の靴を忠実に再現

「Safety Shoes」が「造形品の部」グランプリを受賞

株式会社 晃新製作所

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画像:「惚れ惚れするような曲面」 ― 実物大の靴を忠実に再現「造形品の部」グランプリを受賞した㈱晃新製作所の「Safety Shoes」(SUS304・板厚1.5㎜、3.0㎜、W95.5×D271×H100㎜)

細部までこだわりつくして忠実に再現

画像:「惚れ惚れするような曲面」 ― 実物大の靴を忠実に再現星野耕一社長(左)と、製作を担当した守屋博史課長(右)

㈱晃新製作所の「Safety Shoes」が「第35回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)の「造形品の部」グランプリを受賞した。

この作品は曲面曲げを多用し、実物大の安全靴を忠実に再現した。全19点の部材で構成され、ソール部はSUS304・板厚3.0㎜、アッパー(上物)部はSUS304・板厚1.5㎜、靴ひもはφ2.0㎜の溶接棒を使用している。

自然なアウトラインや表面の質感、リアルな靴ひものほか、靴底の模様も加工されており、目に見えない細部まで徹底的にこだわってつくり込まれている。直線や平坦な面はほとんどなく、審査委員からは「惚れ惚れするような曲面」「製作者の心意気や執念を感じる」と評された。

サイン・ディスプレイ業界の「空間創造企業」

同社はサイン・ディスプレイやモニュメント・オブジェ、高級建築金物などを手がけ、「空間創造企業」をビジョンに掲げている。デザイン・設計から製作、施工、メンテナンスまでワンストップで対応する生産体制を強みに、鉄道事業者・空港運営会社・百貨店・商業施設・オフィスビル・スタジアムなどで多種多様な施工実績を持つ。

以前は医療機器関係の板金加工を手がけていたが、1996年に星野光男常務、1997年に星野耕一社長が入社してからは、サイン・ディスプレイ・建築金物の分野へと徐々にシフト。設計からの対応力を強化し、施工・メンテナンスまで対応することで、サイン・ディスプレイ・モニュメントの「ワンストップサービス」を特色として打ち出した。

それと並行して、人材確保と人材育成には特に力を入れてきた。同社が手がける製品はほとんどが一品一様で、工業製品というよりは「アート寄り」(星野社長)。そのため、大手ゼネコンや設計者、作家やデザイナーと向き合い、その思いをカタチにする同社のスタッフには、幅広い知識と技術に加え、人間的な魅力も求められる。

「製造部」を構成する約40人のメンバーは全員が多能工。案件を割り当てられた担当課・担当者の単位で、展開・プログラムから抜き・曲げ・溶接・組立・施工にいたるまですべて責任を持って対応し、ワンストップを実現する。平均年齢は30代前半と若く、世に残る製品を手がける使命感と責任感を持ち、ものづくりに対する熱意と高いモチベーションを維持している。技能検定をはじめとする各種資格も、社員が自発的に取得する文化が根づいている。

2022年には埼玉県から「彩の国工場」に、川口市から「川口i-mono(いいもの)・i-waza(いいわざ)ブランド」に認定され、地域の優良企業としても認知度が高まっている。

  • 画像:「惚れ惚れするような曲面」 ― 実物大の靴を忠実に再現べろ部と腰部の間にすき間をあけ、印影をつけて立体感を出した。靴ひもはφ2.0㎜の溶接棒をハンマーでたたいてつぶし、ひも状にした
  • 画像:「惚れ惚れするような曲面」 ― 実物大の靴を忠実に再現「Safety Shoes」の各部位の名称と構成部材の点数(全19点)

多能工集団の一員 ― 3回目の挑戦でグランプリ受賞

今回の受賞作品「Safety Shoes」を製作したのは、製造部二課の守屋博史課長。第33回(2020年度)の板金フェアから毎回、応募作品づくりを担当している。最初は、コロナ禍により仕事量が落ち着いたタイミングで星野社長が板金フェアへの参加を呼びかけ、守屋課長が手を挙げた。

第33回(2020年度)の「扇子」は「技能奨励賞」、第34回(2021年度)の「Small聖火台」は「技能賞」、そして第35回(2022年度)の「Safety Shoes」は「造形品の部」グランプリを受賞し、回を重ねるごとに評価を高めてきた。

現在34歳の守屋課長は入社12年目の中堅社員。高校卒業後、板金加工企業でパンチ・レーザ複合マシンのオペレータとして4年間勤務した後、晃新製作所に勤めていた父親の紹介で同社に入社した。溶接工だった父親の影響で子どもの頃からものづくり―とりわけ溶接作業に興味があった。同社に入社してからは多能工集団の一員として、展開・曲げ・溶接・仕上げ・現場施工と全工程に対応するスキルを身につけた。2017年には工場板金技能士「機械板金作業」1級、2018年には「数値制御タレットパンチプレス板金作業」1級の資格を取得している。

守屋課長は「オペレータのときは毎日が同じ仕事で時間の流れが遅く感じましたが、今はあっという間です。時間がいくらあっても足りません。自分はまだまだ未熟ですし、技術の研さんに終わりはありません。これからも職人として、技術・技能を追求していきたい」と語っている。

  • 画像:「惚れ惚れするような曲面」 ― 実物大の靴を忠実に再現レーザマシンFO-MⅡ 3015NT。「Safety Shoes」の部材加工にも活用した
  • 画像:「惚れ惚れするような曲面」 ― 実物大の靴を忠実に再現曲げ加工を行う守屋課長

会社情報

会社名
株式会社 晃新製作所
代表取締役社長
星野 耕一
所在地
埼玉県川口市榛松1615-1
電話
048-285-2351
設立
1977年(1974年創業)
従業員数
62名
主要事業
公共事業・オフィスビル・商業施設・病院・ホテル・学校などのサイン・内装金物の設計・製作・施工/広告塔・時計塔・モニュメント・オブジェの設計・製作・施工/店舗・展示会におけるディスプレイ金物の設計・製作・施工
URL
https://www.kosing.co.jp/

つづきは本誌2023年6月号でご購読下さい。

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