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SDGsはビジネスを有利にする

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板金業界でもSDGsに全社を挙げて取り組む企業が増えている。SDGsとは、環境問題や貧困問題、地域格差などの経済問題、民族差別、ジェンダー不平等などの社会的な問題などを解決しながら、地球と人類が持続可能なかたちで発展を目指していこうとする取り組みである。

先日うかがった企業は、以前から環境省が策定した日本独自の環境マネジメントシステム「エコアクアション21」に取り組んでおり、社員を含めて環境問題に対する意識が高かった。社員からの提案により、昨年度の全社経営会議で「SDGs宣言」を行うことが決まり、この4月にWebサイトやSNSで発信した。

この企業の経営者は「中小企業にとってもSDGsは無関係ではありません。そればかりか、SDGsに真摯に向き合っていない企業は、これからの市場で勝ち残れなくなると予想されます。特に取引・販売関係、人材採用、資金調達という観点では、こういったことに関する意識の高い会社は、相手側に安心感と信頼感を与えるとともに、今だけが良いのではなく将来までを俯瞰している、社会の持続可能な発展に欠かせない企業という印象が強くなり、継続的なビジネスの発展に役立つと思います」と語っている。

同社は「エコアクション21」を取得した際、こうした取り組みを「社会活動」の一環としてWebサイトやSNSで紹介。すると、同社の取り組みや社員たちの意識の高さに共感して入社を希望する若い人も出てきた。それ以降、この経営者は社会活動の重要性を強く意識するようになったようだ。

若い世代を中心に、「エシカル消費」が新しい消費トレンドになっているといわれている。エシカルとは「倫理的」という意味で、エシカル消費とは「地域の活性化や雇用などを含む、人・社会・地域・環境に配慮した消費行動のことで、一人ひとりの人間が社会的な課題に気づき、日々の買い物を通して、その課題の解決のために自分は何ができるのかを考え、そうした課題に取り組む事業者を応援すること」といわれる。これは「SDGs」の17の目標のうち、ゴール12「つくる責任 つかう責任」に関連する。

今後、人口減少による労働力不足が強まることは必至だ。ただでさえ中小企業の人材採用は、大企業と比べて不利な状況に置かれている。それだけにSDGsへの取り組みに消極的な企業は意識の高い若者たちからスルーされ、優秀な人材の採用が難しくなることも考えられる。

また、この経営者は「SDGsへの取り組みの有無は、資金調達の面でも影響がある」と語る。

背景には、投資にESGの視点を組み入れることなどを原則として掲げる国連責任投資原則(PRI)がある。ESGとは、環境(Environment)、社会(Social)、企業統治(Governance)の略だが、投資先の財務情報だけではなく、これらESGの要素も考慮して投資をしなければならないという原則がPRIとされる。

日本では、最大の機関投資家である年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)が2015年にPRIに署名したことから、ほかの機関投資家・民間金融機関の多くがこれに参加している。その結果、SDGsを推進する企業を金融機関がESG投資で支える、あるいはESG投資を掲げる金融機関の投資先としてSDGsに取り組む企業が選ばれるという関係が強まっている。

同社もSDGs私募債発行や、太陽光発電システム投資への融資などで取引銀行の全面的な支援を受けている。こうした事例からも、中小企業経営者はSDGsがビジネスに不可欠な要素になりつつあることを強く意識する必要があるようだ。

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