板金論壇

「西高東低」の景気模様

西日本には“進取”を旨とする経営者が多い

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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成長企業は「西高東低」の模様

今年に入り、米中貿易摩擦の影響を受けて世界経済が失速気味となり、その影響で日本経済にも下振れリスクが高まっている。

一方、2018年4月7日付の日本経済新聞に「成長企業は西高東低 時価総額増やした企業を集計」という見出しで「2017年度に株式時価総額を増やした企業を本社所在地ごとに集計したところ『西高東低』の結果になった」という記事が掲載されていた。

毎月、全国のお客さまを取材しながら板金業界の業況分析をすると、やはり「西高東低」の傾向が顕著になっている。

2017年、2018年までは、どちらかといえば対照的に「東高西低」の傾向が強かった。2020年の東京五輪開催を控え、競技施設や宿泊施設の建設、道路整備、鉄道インフラ整備にともなう駅務機器の入れ替え、新造車両の投入など、東京を中心に関連事業が活発で、東日本のお客さまからは「忙しい」という声が聞かれた。

それに対して西日本 ― 特に関西地区は、家電をはじめとした電気機械や鋼製家具の大手企業の生産拠点が東日本エリアに移転したこともあって、半導体製造装置や一部の建設機械を除くと全体的に低調という印象があった。

2019年から様相が一変 ― 西日本が活況

2019年に入ると様相は一変した。米中貿易摩擦の影響でスマートフォンや半導体製造装置関連の仕事が激減し、関連する仕事を受注していた企業の中には受注が半減するところも現れている。さらに、中国をはじめ、世界的に設備投資を手控える傾向が顕著で、3年連続して生産額・受注額を伸ばしてきた工作機械業界の受注金額が春以降30%以上ダウン。北陸・東海・南関東を中心に立地する大手工作機械メーカーの仕事量が落ち込んだ。

東京五輪関連の仕事もほぼ出尽くし、春以降は業界全体に停滞感が広がり、受注額も前年同期比でマイナスになる傾向がみられるようになった。

一方、西日本では、2025年の大阪万博開催が決定。大阪での開催は55年ぶりの快挙ということもあって、関西経済を一気に勢いづかせることになった。

大阪万博は大阪市此花区の夢洲(ゆめしま)地区で、2025年5月3日~11月3日の185日間、開催される。テーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」(Designing Future Society for Our Lives)、コンセプトは「未来社会の実験場」(People’s Living Lab)。来場者数2,800万人、経済効果は約2兆円が見込まれている。

会場となる夢洲は、大阪府・大阪市や関西経済3団体が、人工島である夢洲を国際観光拠点とする「夢洲まちづくり構想案」を2017年にまとめている。とりわけ、万博会場とは別に、2024年頃の開業を目指してカジノ併設の統合型リゾート(IR)を誘致する計画が進んでいる。誘致が決まれば「構想案」は具体化、万博以上の波及効果が期待されている。

夢洲への交通アクセスの整備の必要性など、万博とIRにはインフラ整備を中心に共通するさまざまな課題が存在しており、大型投資が必要になると見込まれ、建設業界をはじめとして関西経済界では期待が高まっている。

日本総合研究所が9月に発表した「関西の景気動向」によると「関西の景気は、底堅さを保っている。輸出は急減の動きが収まり、生産も減産姿勢が弱まった。企業部門では、設備投資に対する積極的な姿勢が維持されている。雇用情勢は良好さを保ち、所得環境は改善の動きは弱いものの過去対比で高水準にある。家計部門においては、雇用・所得環境が安定的なもとで、個人消費には底堅さがある」という。

つづきは本誌2019年11月号でご購読下さい。

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