Interview

機械に使われるのではなく、便利に使いこなすをモットーに

技能実習生も含め、多能工化を実現

株式会社 三神鈑金工業所 代表 三神 一浩 氏

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画像:機械に使われるのではなく、便利に使いこなすをモットーに

㈱三神鈑金工業所は1879年に創業された創業143年の老舗板金加工企業である。三神家の古文書などによると、江戸時代から金・銀・銅などを使った飾り職人だった可能性が高く、明治維新後に屋根などに用いる建築金物の加工と施工の仕事を始めたという。

しかし、施工の仕事は天候に左右されて不安定なために、1959年に株式会社として発足後、工場内で建築金物類を加工する仕事に特化、業態を変化させてきた。

現在は建築関連が売上全体の30%、食品機械カバー、設備関連、車の試作部品関連、航空宇宙関連の部品などが60%となっている。得意先の口座数は500社と多い。毎月受注する得意先は約100社。一品一様の仕事が90%以上を占め、その中の50%程度が鋼材業者からの発注となっている。また、同業者から「曲げで困ったら三神鈑金」と言われるほど曲げ加工の技術力には定評があり、複雑で難易度の高い仕事の依頼を受けることも多い。

2001年9月の東海豪雨では、近くの川から工場内に濁流が流れ込み、1階は大人の胸の高さまで水に浸かった。パソコンや帳票類は2階へ避難させ、最悪の事態は回避できたものの、工場が復旧し、設備が稼働するまでには1カ月あまりを要した。受注していた仕事は知り合いの板金工場の設備を夜間だけ借りて加工し、急場をしのぐことができた。これも長年かけて築いてきた同業者との信頼関係があったればこそだ。

2013年に5代目社長に就任した三神一浩氏は51歳。大学卒業後はアマダに入社し、販売・サービスの一線で板金業界と経営者の実態を学んだ。三神鈑金工業所に戻ってからは、父の三神毅会長と母の三神泰代専務の協力を得ながら経営に携わっていった。

2021年5月には愛知県シートメタル工業会の会長に就任し、業界をけん引するリーダーとしても活躍している。

昨年9月から急激に回復

― コロナ禍がやや落ち着いてきましたが、現在の受注状況はいかがですか。

三神一浩社長(以下、姓のみ) 板金業界では忙しい企業と、そうでもない企業という二極化が顕著になっています。忙しいところではコロナ禍以前のピークを超えたという企業も見受けられます。

当社は大手企業との取引が少ないこともあり、2020年の売上は全体で30%程度、落ち込みました。2021年になってからも一進一退という状況でしたが、9月頃から急激に仕事が出てきました。緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が解除された10月はこれまでにない受注額となり、11月以降も継続していて、食品機械関係や建築関係が好調です。建築金物類では、店舗や学校関係の改築・改装の案件が増えています。

一品一様のものづくりに携わっているので、見積り工数が大きな負担になっています。見積りは私の担当になるため、連日遅くまで作業をしています。

  • 画像:機械に使われるのではなく、便利に使いこなすをモットーに2021年に導入したレーザマシンFO-MⅡ 4222NT+AS-4222G
  • 画像:機械に使われるのではなく、便利に使いこなすをモットーに加工材料の70%以上がステンレスのため、板厚が異なる素材を0.5㎜から在庫している

発注元の半数は鋼材業者、材料価格の転嫁はしやすい

― 石油価格や鋼材価格が高騰しています。また、入手が困難な部品も出てきており、納期や価格交渉が大変とも聞きます。

三神 当社の仕事の70%以上はSUS304を主体とするステンレスです。ステンレスの材料価格も上昇していますが、発注元の半数は鋼材業者なので、材料費はお客さまで見ていただけます。また、大半が一品一様の新規品で、その都度見積りが発生しますから、ある程度の価格上昇は見積りに反映することを認めていただけます。

建築関係の仕事はSUSとSECCがメインで、サイズは5´×10´材や5´幅×4m材など、大きな製品が増えています。そのほかにアルミ・銅・チタン・インコネルなど、加工が難しい材料も増えつつあります。

板厚は0.6~9㎜が中心で、20㎜の曲げ加工にも対応したことがあります。即日納品の案件も受注します。図面をいただいた時点で材料の有無を確認し、緊急の場合は得意先の鋼材業者から融通してもらっています。工場ではSUS304を板厚別に在庫し、飛び込みの仕事にも対応できるようにしています。

ロットは1~5個が多いですが、時には100個、1,000個という注文もあります。即日納品の製品もありますが、リードタイムは1週間以内という製品が大半です。

画像:機械に使われるのではなく、便利に使いこなすをモットーに左:2014年に導入した4m対応のベンディングマシンHG-2204でSUS304・板厚1.0㎜の長尺材を2人作業で加工する/中央:角丸巻き加工した製品。材料はSUS304・板厚1.5㎜/右:上部と下部の直径がちがうホッパーは円すい形状に曲げ加工する

会社情報

会社名
株式会社 三神鈑金工業所
代表取締役
三神 一浩
所在地
愛知県名古屋市西区長先町56
電話
052-503-2966
設立
1959年(1879年創業)
従業員数
21名
主要事業
建築・装飾板金加工、精密板金、超精密プレス加工、溶接、食品カバー・自動車関係の試作、航空宇宙部品の製作など
URL
http://www.mikami-bankin.com/

つづきは本誌2022年1月号でご購読下さい。

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