視点

全天候型の盤石な企業体質の構築が求められる

LINEで送る
Pocket

新年あけましておめでとうございます。

今年の干支は寅。日本経済は、寅年には景気が大荒れになるというジンクスがあるといわれています。1962年は岩戸景気の反動で大不況に陥り、1974年は第1次オイルショックの翌年で「狂乱物価」という言葉が生まれました。1986年は円高不況が進行し、1998年は前年秋に山一証券、三洋証券、北海道拓殖銀行といった証券・金融機関が破綻しました。2010年の翌年には東日本大震災がありました。

OECD(経済協力開発機構)は昨年12月、世界の経済成長率(実質GDP成長率)は2021年が5.6%、2022年が4.5%、2023年が3.2%と徐々に減速するとの見通しを発表しました。2021年9月に発表された見通しと比較すると、2021年は0.1ポイント下方修正、2022年は据え置きました。

成長速度鈍化の背景としては、経済活動の再開にともなう需要の増加に対する供給の混乱、インフレ圧力の上昇、労働力不足の長期化、エネルギー価格の高騰、特に欧州を中心にしたガス価格の高騰により、さらなるコスト上昇やインフレ加速が懸念されるとしています。また、オミクロン株などの変異ウイルスの出現が相次ぎ、先行きの不確実性が高まっていることにも触れています。日本の成長率は、2021年が1.8%、2022年が3.4%としています。

また、国際通貨基金(IMF)が昨年10月に発表した世界経済見通しでは、2021年の実質GDP成長率の見通しを5.9%とし、前回7月の予測から0.1ポイント引き下げました。新型コロナウイルスの感染再拡大による供給制約が響き、全体として下振れリスクがあるとの懸念を表明しています。日本の成長率は、2021年が2.4%、2022年が3.2%としています。

昨年10月に発足した岸田文雄内閣は、財政支出が55.7兆円と過去最高となる2021年度補正予算案を閣議決定しました。2022年度予算の概算要求は一般会計で111兆6,559億円と、4年連続で過去最高を更新。国債費と地方交付税交付金を除いた一般歳出は、前年度予算を約3.7兆円上まわる65兆5,641億円となりました。岸田内閣は「コロナ克服・新時代開拓のための経済対策」により、みずからが掲げる「新しい資本主義」を起動し、成長と分配の好循環を実現していこうとしています。中小企業対策にも高額の予算が投入される計画です。

しかし、足もとを見ると鋼材価格・エネルギー価格などの上昇、人手不足、高齢化にともなう技術伝承など、日本経済の基盤に関わる分野で課題が山積しています。

小誌が今号で紹介している「新春アンケート調査」への回答を見ても、経営課題の上位3位を「収益性確保」「人材不足」「人材育成」が占めており、経営者の認識もこうした課題が経営を圧迫すると考えておられるようです。

板金企業の中には、全スタッフの3割以上を外国人技能実習生に頼らなければ工場がまわらなくなった企業もあります。そうした企業は、コロナ禍での外国人の入国制限によって、あてにしていた技能実習生が来日できなくなり、それが要因となって納期遅延が発生し、受注も断念せざるを得ない例が見られるようになっています。

総務省が昨年11月に発表した「令和2年国勢調査」の確定値によると、経済活動の主な担い手となる生産年齢人口(15~64歳)は7,508万7,865人となり、5年前の前回調査から226万6,232人減少しました。ピークだった1995年の8,716万4,721人と比べると、13.9%少なくなりました。

生産年齢人口の減少は日本経済の足かせとなってきました。ウイズコロナの2022年をどのようにむかえるのか ― 大荒れの天候になってもびくともしない全天候型の盤石な企業体質を構築することが求められる1年になりそうです。

LINEで送る
Pocket

関連記事

視点記事一覧はこちらから