視点

アクセルとブレーキの踏みまちがいにご注意を

LINEで送る
Pocket

昨年は新型コロナウイルス(以下、新型コロナ)の話題で明け暮れた気がします。

今年は感染拡大を防ぐため、「Stay Home」で静かな新年を迎えられた方が多かったと思います。忘年会も新年会も中止になり、新年早々に行われる各業界団体の賀詞交歓会もオンラインで開催されるなど、自粛ムードで年が明けました。

しかし、感染再拡大を受け、政府は国内の感染者の半数以上を占めている首都圏の1都3県に「緊急事態宣言」を発令(1月8日から効力発生)。1月14日には感染拡大が続いている愛知県や大阪府などの7府県も対象に追加しました。以前のように対象を全国規模に拡大する可能性もあります。今回の宣言は限定的で経済への影響も軽微といわれていましたが、拡大が収まらなければ景気の「二番底」も懸念される事態となり、景気の先行きが読めなくなっています。

感染力が高い“変異種”に感染した患者もあちこちの国や地域で増えており、昨年末から欧米で接種が始まったワクチンの効果がどの程度あるのかもわからず、収束の兆しが見えない中で不安が広がっています。このままでは7~8月の東京五輪開催も難しくなってきます。

国際通貨基金(IMF)は、新型コロナの影響で先進国と新興国がそろって景気後退に陥り、世界全体の経済損失は2020-2021年の2年間で12.5兆ドル(約1,300兆円)になると試算しています。また、世界各国がこれまでに実施した財政支援の総額は、2年間の経済損失に匹敵する11.7兆ドル(約1,200兆円)にものぼると指摘しています。

さらに、世界的規模で金融緩和が行われ、世界的にゼロ金利時代に突入しています。その効果もあってニューヨークダウ平均株価は史上初の3万ドルを達成、日経平均株価も1月8日に2万8,000円台と30年ぶりの高値をつけるなど、株価は大きく上昇しました。

2021年も積極的な財政・金融政策が世界的に続くと考えられ、各国で経済活動正常化の動きが進み、世界経済はゆるやかに回復していくと思われます。

日本の実質GDP成長率は、2020年4-6月期に前期比年率△29.2%と大幅な落ち込みを見せたものの、7-9月期はその反動で同+22.9%(2次速報値)と大幅なプラス成長となりました。輸出も中国向けを中心に高い伸びを示しています。小誌1月号に掲載した「新春アンケート調査」では、回答者の半数以上が「2021年は前年比で増収になる」と予測しました。

しかし、新型コロナの影響による収益の大幅な悪化や事業環境の先行き不透明感から、設備投資には慎重な姿勢が続くとみられます。それに加え、緊急事態宣言の発令という新たな事態で、消費や輸出は下押しされ、回復ペースが鈍化することも考えられ、2019年並みの経済回復は2022年以降になりそうです。

あるエコノミストは「これから本格的な経済危機がくる。過去の状態に戻るとは考えない方が良い。需要が従来の70%程度になる“7割エコノミー”を前提にすべてを捉え直す必要がある」と警鐘を鳴らしています。

板金業界の経営者とお会いするとネガティブに考える方々は意外に少なく、設備投資にも意欲的な方々が多いと感じます。これは大いに歓迎すべきことですが、すべての意思決定をポジティブシンキングで押し通すのは危険です。

業種によっても事情は異なります。たとえば携帯電話業界では販売台数は回復するものの、市場での競争環境がきびしく、単価は逆におさえられ、収益性が悪化するなど、業種ごとに慎重な見方が必要です。

今年1年はアクセルとブレーキを踏みまちがえないよう、慎重なかじ取りが求められるように思います。

LINEで送る
Pocket

関連記事

視点記事一覧はこちらから