数年続く“投資の軸”になるか、好調な工作機械受注
景気の先行指標といわれる工作機械受注が好調だ。
6月5日に開催した日本工作機械工業会の定時総会後のパーティーで、坂元繁友会長(芝浦機械㈱社長)は、2026年の受注総額を賀詞交換会の際に発表した1兆7,000億円から、2兆円に上方修正した。達成できた場合、2018年に記録した過去最高額(1兆8,158億円)を大きく上まわる受注規模となり、初めて2兆円の大台に乗ることになる。
その前兆はすでに2025年度の受注総額に表れていた。2年連続増加して、1兆7,046億円と3年ぶりに1兆7,000億円を超えており、2017年度、2022年度に次ぐ歴代3位の受注総額となった。米国・トランプ政権の関税措置を受けた景気の先行きへの懸念から、夏場にかけて受注が伸びなやんだが、追加関税に関する各国間の協議が進んだ9月以降、外需を中心に受注額が急速に高まり、12月の受注額は1,500億円超に。2026年3月には内需の期末効果やさまざまな業種で設備需要が高まった結果、1,934億円と過去最高額を大きく更新した。
さらに4月の受注額は前月比で3カ月ぶりに減少したものの、1,889億円と歴代2位にあたる高い水準を保っている。5月の受注額(速報値)も前月比で2カ月連続減少したものの、1,768億円と3カ月連続で1,700億円を上まわり、歴代4位の受注額となった。前年同月比の増加率は2カ月連続で30%を超えている。特に5月の37%増という数字は、設備投資需要が想定以上に強いことを示している。とりわけ外需に関しては2025年12月以降の各月の受注額が歴代1~6位を占め、空前の高水準が継続しており、需要は本格的に回復してきた感がある。内需も2カ月連続で前年同月比で30%以上増加していることを考えると、国内企業も設備更新や自動化投資を本格的に始めてきていることがうかがえる。
こうした受注ベースが今後も続くことを想定して2026年の受注総額が2兆円の見込みに変更されたようだ。
2025年は国内外では原材料・エネルギー調達コスト、輸出、生産、個人消費などに多くの懸念材料があった。国外ではロシアのウクライナ侵攻の継続や米国・イスラエルとイランの紛争激化など中東情勢の悪化、紛争の長期化、高市首相の台湾有事発言に始まった日中関係の悪化、トランプ関税などによる貿易秩序の混乱があった。
国内でも物価高、人手不足、長期金利の上昇、円安、実質賃金の伸び悩みなどの諸問題があった。このようにきびしい中で、工作機械受注が好調に続いた主な要因は、世界的なAIブームを受けた半導体や、世界的に「ゴールドラッシュ」の様相があるデータセンター需要などが大幅にカバーし、AI・半導体が需要を引っ張り始めたという構造変化が起きたことだ。これは一時的な動きではなく、今後数年続く“投資の軸”になる勢いだ。その結果、2025年の日本の輸出額は110兆4,480億円と過去最高を記録した。
次に、原材料やエネルギーを含む生産コストの上昇は、価格転嫁により吸収され、むしろ企業収益が増加し、コスト対策や人手不足への対応として、2025年度の大企業の設備投資が前年比14.3%増の約22兆7,000億円となったと想定される。
景気の先行指標といわれている工作機械受注だけに、この状況は今後の日本の景気を見通す意味でも頼もしい限りだ。板金業界でも工作機械業界向けカバー需要が回復していくと考えられる。半導体・データセンターに加え、工作機械と板金業界にもフォローの風が吹き始めている。


