1部品から始める3D化 ― 小さく始めることが一番の近道
H-ENG 代表 林 義人
いきなり全社導入は困難 ― 「スモールスタート」がおすすめ
第1回では「なぜ今、3次元CADなのか?」という問いを、経営・設計・現場という複数の視点から考えました。では実際に、3D設計をどうやって始めるのか。
結論から言えば、いきなり全社導入できる会社はありません。特に板金業界では、長年にわたり2次元CADで仕事がまわってきました。加工機も、現場も、取引先も、2D図面を前提に動いています。だからこそ、まずはスモールスタートで小さな部品から始めることをおすすめします。
3次元CAD導入のポイント
【Point1】 旧2次元CADを止めない ― 並走させる
現実的な進めかたは、
● 旧2次元CADはそのまま運用する
● 一部の仕事だけ3次元CADでつくってみる
● 徐々に3次元CADの比率を上げる
― という“並走型”です。2次元CADの運用を止めないことで、設計実務者の心理的な抵抗も、現場の不安も、ぐっと小さくなります。
【Point2】 社内推進者を決める ― 2名体制で進める
3D導入で最も重要なのは「人」です。ソフトではありません。
まずは社内で、3D化の推進者を2名決めます。ひとりに任せきりにすると、負担が大きく、不安も増えます。だからこそ、2名体制が理想です。
推進者の役割は単なる「オペレータ」ではありません。
● 操作を覚える
● 社内にわかりやすく説明する
● 小さな成功体験をつくる
― いわば、3Dの社内アンバサダー(宣伝大使)です。「設計だけの3D」ではなく、「現場で使われる3D」へと進化させる存在です。
最初から社員全員を教育する必要はありません。むしろそれは失敗のもとです。まずは1~2名がしっかり理解し、成功事例を社内に示す。人は“理屈”より“実例”で動きます。3D導入は、システム導入ではなく、人材育成プロジェクトなのです。
【Point3】 3D移行期間を明確に設定する
3D導入に成功している会社は、移行期間を明確に設定しています。たとえば、
● 1年間は並走期間
● 6カ月で単品は3D化
● 1年後には新規案件は原則3D
― といったように、時間軸を持たせます。期間を決めずに導入すると、フェードアウトする可能性が高いです。
【Point4】 「ある仕事に限定する」でも良い
3Dは万能ですが、最初から全部3Dにする必要はありません。たとえば、「カバー系製品のみ」「特定の客先のみ」など、仕事を限定するのも有効です。対象を絞ることで、成功確率は大きく上がります。
【Point5】 現場にも「3Dを見られる環境」をつくる
3Dを設計部だけで完結させてはいけません。現場を巻き込み、「現場で使われる3D」へと進化するために、
● 現場PCでビューワを導入する
● タブレットで回転表示できるようにする
● 加工前に3D確認をする
― ここまで到達して初めて「伝わる設計」になります。
【Point6】 あえて「2Dの方が簡単な形状」も3Dでつくる
ここが非常に重要です。曲げ箇所が多かったり、複雑な形状だったりすれば、3Dで描いたほうが早いでしょう。しかし2Dで描いたほうが早い形状はたくさんあります。それでも、最初はあえて3Dでつくってみることをおすすめします。
なぜかといえば、
● 操作習得が進む
● モデル構造の理解が深まる
● 変更設計に強くなる
● 将来の応用が効く
― つまり、習得を優先する時期が必要なのです。その先に、前回取り上げた3Dの本当の恩恵があります。
「簡単な形状」の3Dモデリングを実践
それでは実際に「簡単な形状」のモデリングをしてみましょう。2D(AP100)なら、3分で描ける形状ですが、これを3Dで描いていきます。
[仕様]板厚:2㎜/曲げ:90°×1カ所/穴:4カ所/外形:シンプルなL形/コーナー:4-R3
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