Interview

「つなぐ投資」による事業承継の新潮流

「自己勘定投資」による中長期的な支援で自立自走できる成長企業へ導く

NYC 株式会社 代表取締役副社長 尾上 侑己 氏

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画像:「つなぐ投資」による事業承継の新潮流尾上侑己(おのうえゆうき)氏

NYC㈱は、2022年に創業した中小企業専門の投資会社。主に後継者不在などの課題を抱える中小企業(年商1億円以上50億円未満)に対して「つなぐ投資」(M&A)を行い、経営支援を通じて投資先企業の事業の継続と成長に取り組んだのち、新たな株主へと譲渡する。

最大の特徴は、自己資金を活用した「自己勘定投資」(プリンシパル投資)という形態の投資手法だ。投資家から資金を募るファンドとは異なり、自由度が高く、保有期間の制約もないため中長期的なスパンで成長支援を行える。

創業メンバー3名はいずれも30代で、投資ファンドなどで中小企業投資や経営支援に携わってきた。創業から3年間で投資実績は18社、グループ売上高は75億円におよぶ。投資先企業の中には、板金加工を手がける3社も含まれる。

「さらなる飛躍を実現する新しいカタチの事業承継」を提案する同社の取り組みについて、尾上侑己副社長吉田幸司ディレクターに話を聞いた。

後継者不在企業の事業継続・持続的成長を

画像:「つなぐ投資」による事業承継の新潮流NYCが展開する「つなぐ投資」のビジネスモデル

― M&Aによる第三者承継が浸透し、投資会社の存在感も高まっています。御社の事業内容を教えてください。

尾上侑己副社長(以下、姓のみ) 中小企業の中には、独自の技術・強み・歴史・ノウハウを持ち、大きな可能性を秘めているにもかかわらず、後継者不在で廃業を考えている企業が数多く存在します。私たちは中小企業投資・中小企業経営のプロフェッショナルとして「その仕事を、未来へつなぐ」をミッションに掲げ、日本経済を支える中小企業の事業継続・持続的成長に取り組んでいます。

当社では外部からの資金に頼らない「自己勘定投資」(プリンシパル投資)により、投資先企業から株式を譲り受けます。保有期間は5年を目安とし、当社の担当者2~3名が取締役となって、さまざまな経営支援を行います。利益体質の成長企業として自立自走できる状態まで支援したのち、新しいオーナーの方へ株式を譲渡します。

投資会社として、株式を取得したときよりも高い金額で譲渡することでリターンを得ます。また、経営支援を行う期間はコンサルティング費をいただき、場合によっては株主として配当をいただきます。

「自己勘定投資」による中長期的な成長支援

画像:「つなぐ投資」による事業承継の新潮流吉田幸司ディレクター

― 最大の特徴は「自己勘定投資」という投資形態とお見受けします。投資ファンドとのちがいを教えてください。

尾上 ファンドは外部の投資家から資金を預かり、数年後にリターンをつけてお返しするモデルです。投資家へのリターンを短期間で最大化することがミッションになります。

一方、自己資金による「自己勘定投資」は、リスクは高くなりますが、外部の投資家や株主が関与しないため、自由度が高いのが特徴です。保有期間の制約もないため、中長期的なスパンでさまざまな取り組みを行うことができます。

― 創業メンバーのみなさまは前職の投資ファンドで中小企業投資を行っていたとのことですが、なぜリスクの大きい「自己勘定投資」を選択されたのでしょうか。

尾上 ファンドの中小企業投資だと、保有期間が2年前後、短いと1年強で売却しなくてはならないこともあります。その間に経営支援を行って企業価値を高めようとしますが、2年間でできることは限られます。経営後継者を採用し、引き継ぎをするだけで精一杯というのが実情です。

私たちとしてはもっと腰を据えて、中小企業のみなさまを持続的成長が可能なレベルまで支援したいという思いがあり、そのためには「自己勘定投資」がフィットすると考えました。

吉田幸司ディレクター(以下、姓のみ) ファンドの場合は、1~2年すると売却の準備でそわそわし始めます。拙速な改善・改革では、従業員の方々も疲弊してしまいます。私たちは中長期的な観点から落ち着いて一つひとつ取り組めるので、お互いにバランスの良い負荷のかかり方だと思います。

― 事業会社によるM&Aとのちがいはいかがでしょうか。

尾上 よく「色がつく」などと表現されますが、事業会社の傘下に入ることで社名を変えることになったり、日常的な業務プロセスも親会社のやり方に従うことになったりします。その点、当社は投資会社であって無色透明。社名も維持しますし、従業員の雇用も今までどおり引き継ぎます。業務プロセスを急激に変えることもなく、企業の文化や特色を残しながら成長へ向けた取り組みを支援することができます。

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会社情報

会社名
NYC 株式会社
代表取締役社長
中塚 庸仁
代表取締役副社長
尾上 侑己
所在地
東京都中央区新川1-6-11
電話
03-6280-3176
主要事業
中小企業投資、ベンチャー投資、経営コンサルティング、M&Aアドバイザリー
URL
https://nycinc.jp/

つづきは本誌2025年11月号でご購読下さい。

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