特集

第37回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介

斬新なアイデア、高度な曲げ加工の技能と設計技術を用いた立体作品

「王冠」が「厚生労働大臣賞」を受賞

株式会社 MMR技研

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画像:斬新なアイデア、高度な曲げ加工の技能と設計技術を用いた立体作品「厚生労働大臣賞」を受賞した㈱MMR技研の「王冠」(SUS304・板厚1.5㎜、W200×D200×H155㎜)

高度な曲げの技能とアイデア、設計技術が評価

画像:斬新なアイデア、高度な曲げ加工の技能と設計技術を用いた立体作品左から西田庄吾専務、溶接・曲げ・旋盤担当の上中文也さん、西田元昭社長、溶接・曲げ・レーザ担当の田宮真人さん、曲げ・組立・検査担当の水木琢馬さん

「第37回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)の「単体品の部」に出品した㈱MMR技研の「王冠」が、最高度な熟練技能・手法を用い、品質・精度のきわめて高い作品に贈られる「厚生労働大臣賞」を受賞した。

この作品は、SUS304・板厚1.5㎜をレーザ加工で切断したブランク材をラジオペンチで手曲げ加工し、溶接レスで製作した。サイズはW200×D200×H155㎜と小ぶりだが、存在感のある作品に仕上がっている。加工精度は±1.0㎜で完成度が高い。製作者からのアピールポイントには「溶接を使わない板金加工の立体構造に挑戦しました。立体構造の板金設計やレーザ加工で細部加工にも挑戦しました。立体的な完成品から、平板形状を想像してみて下さい」としか書かれておらず、加工技術、加工ノウハウもうかがい知れない。

右ページの展開図を見てもらえばわかるが、この作品は放射線状に設計されている。王冠の最上部の突起は、王冠の主部とは別に成形されており、王冠上部の8方向から中央に集まる腕(下のリングから突起までつながる部位)とピンとホールで締結されている。王冠の下部にある2つの細いリングのうち、「下のリング」は連続した波形状にレーザ加工しており、波形状を直線に成形することで、設計・ブランク加工段階では「上のリング」よりも内側に位置しているにもかかわらず、「上のリング」より直径が若干広くなり、全体に安定感をもたらしている。

「上のリング」より上部には8本の腕部を含む32本の柱部を放射線状にレーザ切断し、柱上部と柱上部の間を結ぶ橋の部分を「への字」に加工して、円筒状に盛り上がらせた。目を引くデザイン、王冠として綺麗にかつ見栄え良く見せるための曲げ加工およびリング形状への加工 ― 高度な曲げ加工の技能と平板から立体形状へのアイデアおよび設計技術、審査委員に挑戦する姿勢などが評価された。

  • 画像:斬新なアイデア、高度な曲げ加工の技能と設計技術を用いた立体作品「王冠」の展開図
  • 画像:斬新なアイデア、高度な曲げ加工の技能と設計技術を用いた立体作品ファイバーレーザマシンVENTIS-3015AJe

技術・技能の継承を目指し、2008年に創業

㈱MMR技研の西田元昭社長は長年板金加工に携わり、複数の板金工場で設計~プログラム~ブランク加工~曲げ加工~溶接~品証を経験、工場長として工場経営を任されたこともあった。

「それぞれの板金工場に勤務した期間はさまざまでしたが、いろいろな仕事を任せてもらいました。2社の工場をかけ持ちで担当したこともあります。年齢を重ね、次第に『自分が培ってきた技術・技能を、これからの日本のものづくりを支えていく若い作業者たちに教えていきたい』という気持ちになってきました」。

「設備の自動化・ロボット化・システム化が進んだことで、誰がやってもできるような仕組みができ上がってしまいました。誰でもできる仕事であれば、日本でつくる必要はありません。安くて良いものができるのであれば、ものづくりはどんどん海外へ移転していってしまう。しかし、新しい技術を開発しようとしたときには、高い技術や技能が必要になります」(西田社長)。

そうして西田社長は2008年1月に個人創業し、2011年11月に同社を設立した。同社の社名はMachineの「M」、Makeの「M」、Roomの「R」を意味している。

  • 画像:斬新なアイデア、高度な曲げ加工の技能と設計技術を用いた立体作品忠岡工場の曲げ工程
  • 画像:斬新なアイデア、高度な曲げ加工の技能と設計技術を用いた立体作品忠岡工場の溶接工程

会社情報

会社名
株式会社 MMR技研
代表取締役社長
西田 元昭
本社(忠岡工場)
大阪府泉北郡忠岡町馬瀬3-12-10
和泉工場
大阪府和泉市和気町1-32-3
電話
0725-58-8844(和泉工場)
設立
2011年(2008年創業)
従業員数
10名(役員除く)
主要事業
機械設計、板金設計、大手企業と装置の共同開発、第二種圧力容器の設計(強度計算)、重工業や生産設備(FA)の筐体や安全カバーなどを製作
URL
https://mmr.co.jp/

つづきは本誌2025年6月号でご購読下さい。

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