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第37回 優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介

葛飾北斎の名画を10層のレイヤーに分け積層することで、立体的に表現

「METAL-TOY『神奈川沖浪裏』"The Great Wave"」が「神奈川県知事賞」を受賞

株式会社 石川金属製作所

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画像:葛飾北斎の名画を10層のレイヤーに分け積層することで、立体的に表現「神奈川県知事賞」を受賞した㈱石川金属製作所の「METAL-TOY『神奈川沖浪裏』”The Great Wave”」(SUS304・板厚0.6㎜、W53×D19.2×H60㎜)。

立体感を表現するアイデアが評価される

画像:葛飾北斎の名画を10層のレイヤーに分け積層することで、立体的に表現左から山田慶一 専務、佐藤隆聡リーダー、新傳信彦課長、田中良樹さん

「第37回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)の「単体品の部」に出品した㈱石川金属製作所の「METAL-TOY『神奈川沖浪裏』”The Great Wave”」が、将来の製品化に期待が持てるアイデアや考え方、技術・技能が含まれている作品に贈られる「神奈川県知事賞」を受賞した。板金フェアへの応募3回目での快挙となった。

この作品は葛飾北斎の「神奈川沖浪裏」を板金により立体的に表現したもの。元絵を10個のレイヤーに分けて設計し、それらを連ねた1枚の図をSUS304・板厚0.6㎜から切り出した後、手で折り曲げることで、奥行きのある立体的な作品に仕上げた。元絵は平面だが、この作品については手前の波から奥の背景まで、距離に応じて1枚ずつつくられていることから奥行きが生まれ、視点を横に移動することであたかも波が動いているように見えるなど、ダイナミックさも感じられる作品になった。完成寸法がW53×D19.2×H60㎜と小さくどこでも飾れるため、地域のお土産としての活用も期待できる。構図をレイヤーに分け、折り曲げると1つの作品になるというアイデアが高く評価された。

画像:葛飾北斎の名画を10層のレイヤーに分け積層することで、立体的に表現SheetWorksでモデリングした「METAL-TOY『神奈川沖浪裏』”The Great Wave”」の展開図

波のしぶきや舟を漕ぐ人の姿など細部まで再現

山田慶一専務は受賞作品について次のように語っている。

「これまで奨励賞をいただいたことはありましたが、上位賞をいただくのは初めてで驚きました。当社が受注製品以外の作品づくりに取り組んだのは、工場見学に来社された方々への来場記念品が最初です。数年前からは、子どもたちにものづくりの楽しさを伝えていく活動の一環として、毎年石狩市で開催されるイベントの、石狩市商工会議所工業部会の展示コーナーで、金属のおもちゃを『METAL-TOY』として出品しています。しかし、板金フェアのようなコンテストに応募する意思はありませんでした」。

「応募のきっかけはアマダから、『北海道からの応募が少ないので、ご協力をお願いします』と要請されたことです。どんな作品をつくればいいか、考えあぐねている中で、仕事を依頼している工業デザイナーに相談したところ、『インバウンド需要もあって、浮世絵が国内外で話題になっている。浮世絵を板金で製作してみるのもおもしろいのではないか』とアドバイスをいただきました」。

「そのアイデアを持ち帰って、プログラム室の佐藤隆聡リーダーに相談し、葛飾北斎の『富嶽三十六景 神奈川沖浪裏』をテーマにした作品を製作することにしました。デザイナーにも協力してもらって作成したデザインをもとに、3次元ソリッド板金CAD SheetWorksを使って、加工データを作成。ENSIS-3015AJでブランク加工した後、手曲げで仕上げました。『神奈川沖浪裏』の波しぶきや舟を漕ぐ人の姿など細かな部分まで再現したいと、細部のCAD作業にかなりの時間を費やしました。また、1枚の浮世絵を薄板切断し、積層して構成することにより立体感が出て、迫力のあるものに仕上げることができました」。

  • 画像:葛飾北斎の名画を10層のレイヤーに分け積層することで、立体的に表現自動倉庫MARSと連動するファイバーレーザマシンENSIS-3015AJ(6kW)+MPL-3015
  • 画像:葛飾北斎の名画を10層のレイヤーに分け積層することで、立体的に表現ベンディングマシンHG-1303(手前)による曲げ加工

会社情報

会社名
株式会社 石川金属製作所
代表取締役
石川 健二
所在地
北海道石狩市新港西3-764-7
電話
0133-74-8331
設立
1973年
従業員数
32名
主要事業
農業機械、特殊車両、除雪車、搬送装置、産業機械、建築・土木などの単品、物件の板金部品製造
URL
https://www.ishikin.com/

つづきは本誌2025年6月号でご購読下さい。

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