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労働力不足に対応した外国人材の受け入れ拡大

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最近は飲食店やコンビニエンスストア、ホテルのフロントなどで外国人材の姿を見かけるようになった。中小製造業では現場作業者の半数が外国人材という工場も珍しくない。特に「3K」(きつい・汚い・危険)といわれる溶接・バリ取り・仕上げ・塗装など、敬遠されやすい職場では外国人材の割合が増える傾向にあるようだ。

総務省が発表した「人口推計」によると、2023年10月1日現在の日本人の人口は1億2,119万3,000人で、前年から83万7,000人減り、1950年以降で最大の落ち込みとなった。少子高齢化の歯止めはかからず、17年連続で出生児数が死亡者数を下まわる自然減となった。

生産年齢人口の減少も進んでいる。厚生労働省によると、日本で働く外国人労働者は2023年10月末現在で204万8,675人。前年と比べて22万5,950人(12.4%)増加した。

急速に進む少子高齢化、そして人口減少社会という局面に直面する日本で、最も懸念されていることのひとつが「労働力不足」。このような状況のもと、政府や経済界も労働力不足を解決するためにさまざまな対策を議論している。

労働力不足の解決という目標を達成するための手段としては、大きく以下の5つが議論されている。

①出生率の上昇
②女性・高齢者の就業促進
③副業・兼業の促進
④AI・ロボット等の最新技術の導入
⑤外国人労働者の受け入れ拡大

労働力不足の早期解決という観点から考えると、①の「出生率の上昇」は、行政がさまざまな支援を行っているものの、改善していない。厚生労働省によると2023年の合計特殊出生率は1.20で、過去最低を更新した。しかも、労働力不足の解決としては効果が出るまで時間がかかる。

②の「女性・高齢者の就労促進」は、量的効果はあまり大きくないが、高い能力・技能を持っているという意味では質的に大きな効果が期待できる。

③の「副業・兼業の促進」は、労働力不足の量的効果は小さいが、労働市場の流動性を高めることへの期待がある。

④の「AI・ロボット等の最新技術の導入」は、自動化・省人化・スキルレス化を進めることによって労働力不足を解決しようという考え方に基づく。

⑤の「外国人労働者の受け入れ拡大」は、海外から外国人材を受け入れることによって、量的な意味で労働者不足を解決するという考えに基づく。

5つの対策の中では、「外国人労働者の受け入れ拡大」が他の対策と比較して即効性が高く、量的にも大きな効果がある。そこで政府は、現制度を前提とした対応は限界をむかえているとして、外国人材を安定的・量的に確保するために技能実習制度の見直しなどを進めている。

しかし、ここには課題も多い。コミュニケーションの壁、生活習慣のちがい、そして適切なサポート体制の不足などにより、トラブルも増えている。また、3K職場の安価な労働力として外国人材を受け入れることが問題視され、外国人から見た日本の魅力が薄れているともいわれる。

すでに永住権を取得し、家族も呼び寄せた高度人材で、勤め先では管理職となっている方に話を聞くと、「多様性を認めようとしない日本社会のありかた、在留資格取得の難しさ、教育問題や家族を同伴しにくいことなどが、日本で働くうえでハードルになっている」と語っている。

私たちの考え方を根本的に変えていく必要がある。

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