Interview

AGICを成長エンジンに未来を拓く

「お客さまとの共創によって日本のものづくりを強くする」

株式会社 アマダ 代表取締役社長 山梨 貴昭 氏

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画像:AGICを成長エンジンに未来を拓く山梨貴昭氏

㈱アマダは2月3日、神奈川県伊勢原市の本社内に「Amada Global Innovation Center」(AGIC)をオープンした。AGICは「お客さまとともに金属加工の未来(あす)を共創する空間」というコンセプトのもと、顧客が求める「新素材や新加工技術への対応」「自動化・生産性の向上」といった課題を解決し、生産革新の提案をすることを目的に開設された。既存の「ソリューションセンター」を約3年かけて全面刷新した。延床面積は約3万㎡で、業界の自社展示施設としては世界最大規模となっている。

AGICは、顧客専用のラボスペースである「Innovation LABO」、90機種を超える最新商品群のマシンとテクノロジーを体感できる「Innovation SITE」、最新IoTソリューションなどを訴求する「Engineering FIELD」、アマダが考えるものづくりの未来予想図を紹介する「Future Vision」などを備え、顧客とともにこれからのものづくりを探求し、創造する場として活用していく。

一方で同社は2月9日、山梨貴昭取締役専務執行役員が2023年4月1日から社長に就任し、8年間社長を務めてきた磯部任社長が代表権のある会長となるトップ人事を発表した。AGICの開設によって顧客への提案のあり方、商品のあり方を見直すとともに、経営体制も刷新することで、アマダの変革を強くアピールした。

山梨新社長はこの3年間、アマダの開発・製造部門のトップ、AGICの推進責任者としてリーダーシップを発揮してきた。これからは「脱炭素社会へむけたGX」「情報技術の進展によるDX」「労働力・熟練技能者不足」といった世界の潮流に対応し、同社の経営をリードしていく。

山梨新社長にAGIC開設の狙いと、金属加工業界のものづくりの現場が抱える課題への対応などについて話を聞いた。なお、このインタビューは社長就任前に行っており、AGICの推進責任者、取締役専務執行役員としての発言となっている。

日本のものづくりを強くすることが金属加工の総合メーカーとしての使命

― 2月3日のAGICグランドオープン後もイベントを立て続けに開催し、多くの方がAGICに来場されていると思います。みなさまの反応はいかがですか。

山梨貴昭氏(以下、姓のみ) 当社の伊勢原事業所でリアルイベントが開催されるのは3年ぶりで、来場されたお客さまが「お客さまとともに金属加工の未来(あす)を共創する空間」としてのAGICに大きな期待をかけてくださっていることを強く感じました。多くのお客さまが好意的に評価してくださり、良いスタートが切れたのではないかと思います。

私が耳にしたお客さまの声としては「以前のソリューションセンターとは大きく変わった」「いたるところで『お客さまと共創する』というコンセプトが感じられた」といったものがありました。

中でも「Innovation LABO」は、コスト・品質・精度だけでなく、新素材や工法改革、設計変更といったものづくり課題に対し、お客さまとアマダの技術スタッフが一緒になって加工検証を行えることが最大の特長。お客さまからは「加工検証から解析・分析まで1カ所で完結できるのは素晴らしい」といったコメントもいただきました。

― AGICを象徴する施設として「Innovation LABO」を立ち上げたお考えについて、お聞かせください。

山梨 板金加工市場、金属加工市場、ものづくり市場をリードする総合メーカーの使命として、日本のものづくりを強くしたいという思いが根幹にあります。すでに多くの産業分野で海外企業に押し込まれている状況ですが、これまでは日本のものづくりの強みである加工技術をきちんと検証できる環境が十分に整っていませんでした。その環境を提供し、お客さまとともに加工技術をつくり上げていくことがアマダの使命ではないかと考えました。

加工検証からデータ解析・分析まで完結できる「Innovation LABO」

― 「Innovation LABO」の「LABOルーム」、「測定室」の充実した設備に対する驚きの声は、何度も耳にしました。

山梨 「Innovation LABO」は「測定室」を含め全10室。「LABOルーム」には、「切る」「曲げる」「付ける」といったカテゴリーごとに最新のマシンとプログラミング装置などのソフトウエアが常設されています。「LABOルーム」はそれぞれ独立したプライベート空間となっており、出入り口はIDシステムで管理され、セキュリティーが確保されています。

先端検査機器を常備する「測定室」は、安定した測定結果を得るため、常時20℃に温度管理されています。また、国内最大級の2×3mの大型石定盤を設置しています。小物・微細製品の寸法測定が可能な画像寸法測定機、デジタルマイクロスコープ、3次元スキャナー、表面粗さ計といった測定機器も備え、品質や精度の測定だけでなく、図面データと加工製品を比較・照合することもできます。溶接品質の検査を目的としたX線透視装置や引張試験機も設置しています。

これだけの測定機器、装置を1カ所に備えているのは工業試験場くらいだと思います。アマダブランドにふさわしい施設として中途半端なことはできませんので、妥協することなく設備の充実をはかりました。

― たとえばレーザ溶接への工法転換を提案したり4M変更を申請したりする場面では、溶け込み量や強度のエビデンスを得意先に提出することが求められる場合があります。「Innovation LABO」の利用者は、測定室で検査したデータをエビデンスとして活用することもできるのでしょうか。

山梨 X線透視装置は溶接部の内部欠陥を破壊することなく観察でき、引張試験機も組み合わせると溶接強度の裏付けが可能です。測定データは持ち帰ることができますから、お客さまは得意先に提出して工法転換などにご活用いただけます。

― 前身の「ソリューションセンター」でも「実証加工」ができました。「Innovation LABO」では、「実証加工」で蓄積した加工実績やノウハウも活かしていくのでしょうか。

山梨 AGICの開設へ向けて、実証加工のデータを整理し、データベースを構築して、さまざまな切り口から検索・活用できるようにしました。これによって、「Innovation LABO」などでお客さまとの共創にも役立てられます。

さらに、「Innovation LABO」は共創空間ですから、アマダが持っている開発途上のシーズの中から、お客さま課題の解決に役立つものを提案することもあります。アマダとしては、お客さまとの共創を通じて開発途上のシーズを検証し、多様なニーズから新たなシーズをつくり出すことで、究極のフロントローディング開発を目指していくことになります。

画像:AGICを成長エンジンに未来を拓く2月3日に開催されたグランドオープニングセレモニーでAGICのコンセプトを紹介する山梨貴昭新社長(当時は取締役専務執行役員)

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プロフィール

山梨 貴昭(やまなし・たかあき)
1963年12月生まれ。神奈川県出身。1987年に青山学院大学理工学部を卒業後、㈱アマダに入社。2016年にAmada Advanced Technology(ドイツ)社長、2018年に上席執行役員ブランク開発本部長、2020年に常務執行役員ブランク開発部門長兼レーザ技術開発部門長、2022年に取締役専務執行役員板金開発・生産本部長を務め、2023年4月1日に代表取締役社長に就任。

つづきは本誌2023年4月号でご購読下さい。

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