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外国人材の力なくして競争力は維持できない

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厚生労働省が2月末に発表した人口動態統計(速報)によると、2022年の出生数は、前年より4万3,169人少ない79万9,728人だった。1899年の調査開始以来、初めて80万人を割り込んだ。一方で2022年の国内死亡数は、前年より12万9,744人増え、158万2,033人だった。死亡数、前年比の死亡増加数ともに戦後最多となった。出生数と死亡数の差である自然増減は、マイナス78万2,305人となった。

前月号の「板金論壇」で「日本の総人口は2050年まで毎年80万人以上減少する」と紹介したばかりだが、深刻な人口減少問題は日本の未来に深刻な影を落としている。

先日、大学・研究機関など6カ所を訪問した際にお聞きした話にも、考えさせられた。日本では博士課程へ進む学生の数が毎年減少している。文部科学省が公表している「令和4年度学校基本調査(確定値)」によると、大学の学部の在学者数が8年連続で増加する中、大学院の博士課程の在学者数は7万5,256人で、2年連続で減少している。

お目にかかった教授・准教授は「このままいくと研究室に残る学生は海外からの留学生ばかりになりそうだ」と危機感をつのらせていた。中には研究を引き継ぐ後継者がおらず、教授の退官にともない消滅が懸念される研究室もあるとのことだった。今までの積み重ねが一瞬にして灰燼に帰すような事態は、きわめて残念だ。

研究室に残らず民間企業に就職しようとしたとしても、博士課程修了者の就職状況はきびしい。「将来への不安が博士離れにつながっているのでは」と懸念を示す教授もいた。

その結果、日本は年間の博士取得者の数が2万人を割り込み、韓国にも追い越されようとしている。先端研究やイノベーションのためには「博士」の活躍が欠かせない。「博士離れ」を止める手立てを早急に考える必要がある。

さらに深刻なのが、2022年1月時点の国内の生産年齢人口7,496万人が、国立社会保障・人口問題研究所の中位推計では2050年に約30%減の5,275万人になると想定されていることだ。こうした事態に対応するため、企業は期限付きの外国人技能実習生ではなく、永住権の取得も可能な高度外国人材の採用に乗り出している。先日うかがった従業員規模100名弱の2社の企業では、日本人従業員と外国人従業員の割合がほぼイーブンとなっており、国籍もさまざまで、すでに外国人従業員から管理者も誕生している。いずれの企業経営者も「同一労働同一賃金の考えで処遇の差別はない」と語っていた。

また、両者とも外国人従業員のモチベーションの高さに感嘆していた。親族への仕送りや、家族の幸せのために働くといった労働への意識が日本人よりも高いと指摘する。

「20年以上働いている外国人従業員は『自分の息子も同じ会社に入ってほしい』と話しています。子どもにとっても、親が仕事に真剣に取り組み、外国人かどうかにかかわらず対価がきちんと支払われている事実を知ると、日本という国をリスペクトし、親と同じ職場で働きたいと勉学にはげみ、環境に馴染めるよう努力するのではないでしょうか。以前の日本人が大切にしていた価値観・モチベーションを、今では外国人従業員の方が高く持っているように見受けられます。今のままでは外国人従業員の方が頼りになる時代がやってくるのでは」と語る経営者の言葉が重かった。

研究も、ものづくりも、外国人材の力を借りないと競争力を維持できない国になりつつあることを謙虚に反省しなければならない。

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