第32回優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介
既成概念にとらわれない“一歩踏み込めるチャレンジャー”
前年の「中央職業能力開発協会会長賞」に続き「神奈川県知事賞」を受賞
株式会社 荏原精密
①「神奈川県知事賞」を受賞した「観覧車」(A5052P・板厚0.3㎜・0.5㎜、W720×D410×H680㎜)/②28基のゴンドラは板厚0.3㎜を使用。曲げ加工は専用治具を使って手曲げで対応している
「観覧車」で「神奈川県知事賞」を受賞
左から製造課の宮田智弘さん、飛田大輔課長、熊谷由美子主任、吉田建司上級技術者、亀井尊課長代理、山﨑舜平さん、中島一郎社長
「第32回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)で「組立品の部」に応募した㈱荏原精密の「観覧車」が、「イノベーションにつながる未来志向のアイデアや考え方、技術・技能が含まれている作品」に授与される「神奈川県知事賞」を受賞した。同社は昨年、第31回の板金フェアで「灯篭」が「中央職業能力開発協会会長賞」を受賞しており、2年連続の上位賞受賞となった。
製作を担当した製造課の吉田建司上級技術者は、製作過程を次のように語っている。
「『観覧車』は、横浜みなとみらいの大観覧車(コスモクロック21)をイメージして製作しました。ゴンドラ数は社員数と同じ28基。社員の連携を大観覧車の輪で表現しました」。
「材料は、アルミ合金の代表鋼種で中程度の強度があり、耐食性・溶接性に優れるA5052Pを使用しました。観覧車を回転させるためには軽くする必要があり、板厚0.3㎜を使用しましたが、薄板のためレーザ加工だけで反りが発生します。紙のように薄いためきれいに組み上げるのが難しかったのですが、曲げることで強度を出しました」。
「ゴンドラは、手曲げ用の治具を製作して手曲げで加工しています。強度が出なければ板厚0.4㎜や0.5㎜に変更することも考えていましたが、0.3㎜で十分に安定感のある作品に仕上がりました」。
左:3次元CADや各種プログラムソフトが並ぶ設計・プログラム室/右:ブランク加工の中核を担うパンチ・レーザ複合マシンACIES-2512T(左手前)とレーザマシンFO-MⅡ 2412NT(右奥)
展示会向けに製作したオリジナル作品
「観覧車」は今回の板金フェアのために製作した作品ではなく、前回「中央職業能力開発協会会長賞」を受賞した「灯篭」と同様、2018年に出展した「第22回 機械要素技術展」で自社ブースの展示用に製作した作品のひとつだ。
中島一郎社長は今回応募することになった経緯と、2年連続で上位賞を受賞した喜びを次のように語っている。
「当社は以前から新規得意先の開拓に力を注いでおり、『機械要素技術展』への出展もその活動の一環でした。ここ最近は展示会への出展を通じて、得意先数が2倍に増え、現在は以前の3倍、150社以上となっています。それでも毎月定期的にご注文をいただけるお客さまは45~50社程度と全体の1/3ほど。1回の取引が1万円程度と少額のお客さまもあるので、とにかく数を増やしたい。最終的には、毎月安定して仕事をいただけるお客さまを100社まで増やしたいと考えています。そのために、得意先総数を300社まで増やすことを目指してがんばっているところです」。
「展示会では、以前は通常取引で受託加工した製品の中から余ったものを展示してきました。しかし、お客さまとの守秘義務契約やコンプライアンス上の観点から、2018年以降はオリジナル作品を製作・展示することを決めました。そのひとつが前回の板金フェアで『中央職業能力開発協会会長賞』を受賞した『灯篭』でした」。
「『灯篭』が予想外の上位賞を受賞したことで、今回も何かの作品で応募しようということになり、『灯篭』と同時に製作した『観覧車』で応募することを決めました。まさかこの作品が『神奈川県知事賞』を受賞するとは予想しておらず、受賞の知らせを聞いたときには歓喜しました」。
曲げ工程ではハイトゲージやノギス、角度ゲージなどの測定器具をマシンのそばに置き、工程内検査を徹底している
大型ディスプレイ(矢印部)にジョブリストを掲示。ハンディターミナルで進捗・実績情報を入力するとリアルタイムに反映される
会社情報
- 会社名
- 株式会社 荏原精密
- 代表取締役社長
- 中島 一郎
- 本社
- 神奈川県横浜市港北区箕輪町2-19-6
- 電話
- 045-562-4351
- 設立
- 1972年
- 従業員数
- 28名
- 主要事業
- OA機器、ATM・現金処理機、自動改札機・郵便区分機などの社会インフラ関連機器の内部部品、自動車部品、鉄道車両部品、航空機部品、船舶部品などの精密プレス加工・精密板金加工・絞り加工・機械加工、プレス金型・治工具の設計・製作
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