特集2

第30回優秀板金製品技能フェア 優秀製品紹介(その1)

バックゲージレスの目曲げが264工程

5日間の短期集中で製品を完成させる

株式会社 ワールド山内

LINEで送る
Pocket

画像:バックゲージレスの目曲げが264工程厚生労働大臣賞を受賞した「ISEKI」(SUS304 2B・板厚1.0㎜、W440×D440×H190㎜)

厚生労働大臣賞を受賞

画像:バックゲージレスの目曲げが264工程山内雄矢社長(中央)、小田島藤夫工場長(右)、佐藤和成営業部長(左)

職業訓練法人アマダスクールが主催する「第30回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)で、「単体品の部」に出品した㈱ワールド山内「ISEKI」が厚生労働大臣賞を受賞した。

山内雄矢社長は3月3日、FORUM246(神奈川県伊勢原市)で開催された同フェア表彰式の受賞社挨拶で「当社がこれまで受賞したなかで最高は銅賞でした。今回、当社の技術力は何か、実際に金物でつくる場合にどういう風に表現するのが良いかと考え、この古代遺跡を発想しました。CADで絵を描いて溶接すれば、こんな形状は簡単につくれます。しかし、当社の技術力をアピールするために、1枚の展開図から加工できないかと考えました。『ISEKI』は264工程の曲げを経て完成します。階段の内側と外側の段はまるきりずれていて、非常に難しい曲げとなっています」と述べた。

ワールド山内の本社を訪ね、山内社長のほか、入社11年目で今年43歳の小田島藤夫工場長と、入社15年目で今年40歳の営業部の佐藤和成部長に話を聞いた。

  • 画像:バックゲージレスの目曲げが264工程AP100で作成された「ISEKI」の展開図
  • 画像:バックゲージレスの目曲げが264工程「ISEKI」のブランク材はファイバーレーザマシンFLC-3015AJで加工した

オンリーワンの技術をアピール

山内社長は「ISEKI」を製作することになった経緯について、次のように語っている。

「『ISEKI』をつくってみようと考えたのは、まったくの思いつきでした。以前、プログラマとしてCADに携わっていた佐藤部長が、古代マヤ文明の神殿からイメージし、AP100を使って作成した1枚の展開図から、試行錯誤して製品化させることができました」。

「現在、アマダの最新機械を購入すれば、ある程度のモノは何でもできてしまい、同じ設備を持っている同業者との差別化が難しくなっています。そうしたなか、当社の技術力を評価してもらうためには、機械が持っている性能を120%、130%使い切って、オンリーワンの技術をアピールするしかないと考えました」。

「264工程の曲げ加工を精度良く行うためにどうするか―この点が一番苦労しました。バックゲージやケガキは使用できず、“目曲げ”で行うしかありません。目曲げをするために、曲げ線の両端に三角形型の小さな切り込みを入れ、それを目印に目曲げを行いましたが、スキルと根気が必要な作業でした。一見すると実現できそうにない形状でも、創意工夫次第で実現できることを学びました」。

「曲げ加工にこだわったのには、理由があります。労働力人口が減少していくなかで、匠の技術をAI(人工知能)やロボット、システムに置き換えていくためには、どういうことに取り組んでいかなければいけないのかと考えていました。当社ではすでに匠の技術をマニュアル化して、マニュアルどおりに作業すれば誰でも熟練技能者と同じように製品がつくれる仕組みをつくり上げてきました。今後はそれをデジタル化・ビッグデータ化して、AIで対応できるようにしていきたい。減少した労働力をAIやロボットで補う必要があるからです。さらに、同じモノづくりであっても、人間が介在する部分(溶接・仕上げの工程)を省き、“切った”“曲げた”だけで製品にならないかと考えました」。

  • 画像:バックゲージレスの目曲げが264工程曲げ加工が途中まで終了した「ISEKI」。モジュラー金型を装備したHDS-1303NTでステップベンド加工していく
  • 画像:バックゲージレスの目曲げが264工程「ISEKI」の裏側

会社情報

会社名
株式会社 ワールド山内
代表取締役社長
山内 雄矢
住所
北海道北広島市大曲工業団地4-3-33
電話
011-377-5766
設立
1983年
従業員数
120名
事業内容
ステンレス製品の高度技術加工、非鉄金属加工、金属加工、レーザ加工、機械加工、切削加工、各種製品の溶接・組立、表面処理、塗装
URL
http://www.world-yamauchi.co.jp/

つづきは本誌2018年5月号でご購読下さい。

LINEで送る
Pocket

関連記事

特集2記事一覧はこちらから