板金論壇

「重陽節」から日本・台湾の高齢化対策を考える/自動化による生産性向上は欠かせない

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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敬老精神の思想が浸透している台湾人

過日、2泊3日の台湾取材に出かけた。たまたま9月18日は「敬老の日」だったこともあって、台湾でお会いした日本の方から「敬老の日まで働くんですか」と、笑われた。孫が成長してきて、そろそろ若い世代から「敬老」の祝いをしてもらう年頃になったと実感させられました。

台湾には代々、中華思想が受け継がれ、お年寄りや年上の人を大切にするようにという教えが小さい頃から育まれている。言葉や教育にもよるが、実の親や周りの大人が、さらにその親や祖父母、係累の高齢者を大切にし、敬って対応している姿を見聞きするうちに、自然と醸成されてきているのだろう。

台北市のMRTやバスに高齢者が乗ってくると、ほとんどの若い人は黙って席を立ち、席を空けてくれる。高齢者に席を譲るのは当然とされている。私もMRTで何度も席を譲られた経験がある。優先座席といわれるシートには、年配者以外の人が座っていることは、ほとんどない。そんな光景を見ると、優先席で眠ったふりまでして席を譲ろうとしない日本の若者に見せてやりたいと思うことがしばしばある。そんなこともあって、台湾の高齢化問題を少し紹介する。

旧暦9月9日は「重陽(ちょうよう)節」

台湾では日本の「敬老の日」にあたる「重陽節」が、毎年旧暦9月9日に定められている。ふたつの奇数(陽)が重なるため「重陽節」と呼ばれている。

今年は10月28日が旧暦の9月9日に該当するので、10月28日にお年寄りを敬い、健康長寿を祝う催しが国を挙げて開催される。ちょうど土曜日で大安にあたるため、家族でお祝いするには絶好の日になりそうだ。

また、古代中国で「菊」は翁草(オキナクサ)、千代見草(チヨミクサ)、齢草(ヨワイクサ)といわれ、邪気を払い長生きをする効能があると信じられていた。山など高い場所に登ったり、スポーツなどの後で「菊酒」を飲んだりすると長生きするとの言い伝えがあり、「重陽節」は別名「菊の節句」ともいわれている

中国では陰陽思想の考えが日常生活の根底にあり、奇数を「陽」として縁起のよい数字と考え、偶数は「陰」として縁起の悪い数字として考える。そのため、3月3日の桃の節句、5月5日の端午の節句、7月7日の七夕など、奇数が並ぶ日付に邪気払いとお祝いを行っている。

9月9日は奇数の中でも最も大きな数字が並ぶとともに、九九は中国語の「久久」と同音で、長久平安の意味があり、長寿を祝うことにもなり、お年寄りを大切にするという意味で、日本での「敬老の日」とも比較されている。

かたや日本でも古くから、五節句の一つであり、七草粥で知られている人日(じんじつ)の節句、雛祭りとして有名な桃の節句、子どもの日として制定されている端午の節句、七夕の節句と並び、江戸時代では重要な行事と位置づけられていた。

一部「日本文化いろは事典」などより転用

つづきは本誌2017年11月号でご購読下さい。

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