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人手不足対策としての職務職能給制度の検討

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製造業の人手不足はますます深刻となっている。その結果として自動化・省力化・ロボット化が進むとともに、外国人労働者を積極的に採用する企業も増え、従業員の30%前後を外国人労働者が占めている企業も多い。

その一方で、期限付きの技能実習生や、ゆくゆくは母国に戻る可能性がある外国人労働者を採用し、技術・技能を教育しても戦力になる頃に辞められ、帰国されたのでは教えがいがないと考え、あえて日本人従業員だけでものづくりを行っている企業も増えてきている。そうした企業に多く見られる傾向として、女性やシニア人材の活用を積極的に進めていること、未経験者に操作してもらうため自動化・スキルレス化設備を導入する割合が高いこと、職務職能給制度を設けて従業員のモチベーションアップとスキルアップを進め、スキルマトリックスに基づき従業員一人ひとりのキャリアステージを設け、目標管理を行っていることが挙げられる。

従業員は担当する作業に必要なスキルを先輩社員からOJTで教わる。そして技能レベルが評価され、職務職能に対応した加給が給与に反映される職能給を導入している。また、熟練技術が必要とされる曲げ加工を、経験が浅い社員でもベテランと同じ方法で加工できる曲げ加工用CAM、重量のある金型交換を自動化したネットワーク対応型の自動金型交換装置付きベンディングマシンを導入して入社間もない女性従業員に担当させる企業もある。

また別の企業では展開・プログラム-ブランク-曲げ-溶接-組立-検査までの工程を作業内容に応じて細かく分業。これまで一人の作業者が行ってきた作業を分業し、複数の従業員が相応に対応する仕組みを導入。それぞれの作業の習熟度に応じた職務等級を定め、その等級を取得しないと、作業を担当させない規定を策定している。

たとえば曲げ加工作業を見ても、試作・修正の繰り返しによるムダ(材料・時間・コスト)、高精度な角度・寸法出しの難しさ、厚板や複雑形状による作業負荷、および熟練技術の必要性という課題がある。そこで、曲げ工程を金型取り付け、寸法調整、加工開始承認、曲げ加工、全数検査で品質を確認し、結果を承認する4つに分類し、それぞれの作業は認定された等級を備えた4人の作業者が担当する仕組みを導入したことで、属人化を避け従業員の多能工化を実現している。

分類された作業項目は数十項目におよび、習熟度に応じた等級が付与され、1級取得するたびに加給される職務職能給制度が導入されている。作業ごとの最高等級を取得するためには国家検定である、技能検定1級以上の取得が条件となっているので難易度は高い。しかし、すべての作業で最高の等級レベルを取得すると加給される賃金だけで百数十万円になる。これまでに達成した従業員は皆無だが、従業員にはチャレンジ目標があるのでモチベーションアップには効果的だ。

さらに「職務職能給を導入することで『技術習得の意欲向上』(能力)と『担当職務の価値』(成果)のバランスを取りながら、人材の定着と組織の柔軟性を強化することができます。特に技能検定の合格やマルチスキル化が昇給に結びつくため、若手・中堅社員が技術向上に励む動機づけにもなります。職能を基準に評価するため、生産計画の変更や欠勤発生時に、異なる工程へ配置転換できる多能工を育成・評価しやすくなることもメリットです」と、活用する企業経営者は語っていた。

職務職能給を人手不足対策として検討する必要があると考えます。

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