存在感のある北陸の板金・鋼材加工企業
鋼製建具・装飾金物の「建材パートナー」 ― モノ売りからコト売りへの進化
「生産プロセス改革」と「新規事業」に挑戦
中央サッシュ工業 株式会社
①「装飾金物」の製品例。同社が手がけた個人宅のガレージ引き戸/②工務店事務所の外装ファサード(パンチングパネル)。施工主が要望した「泡」のイメージをもとに自社設計デザインから対応/③表面にリン酸処理を行ったエントランスの装飾パネル付き建具と施工主の会社ロゴハンドル(真鍮仕上げ)
鋼製建具・装飾金物を手がける「建材パートナー」
今野行生社長(左)と営業の下方健大さん(右)
福井県坂井市の中央サッシュ工業㈱は、オーダーメイドの「鋼製建具」や「装飾金物」を得意とする建材加工企業。総勢24名と小規模ながら、半世紀以上にわたり培ってきた技術力と提案力、少数精鋭ならではの柔軟な対応力を強みに発展してきた。
主力の「鋼製建具」は、ビル用の防火扉や、高齢者施設向けスチールドア枠などを手がける。防火扉は月200セットほど、スチールドア枠は月1,000~1,200台を生産。建築現場の事情に配慮した丁寧なものづくりと短納期対応には定評があり、「建材パートナー」として顧客との強固な信頼関係を築き上げている。
「装飾金物」は2021年以降に取り組み始めた新規事業。今では売上全体の約20%を占め、同社の成長をけん引する「第2の柱」となっている。
設備増強で「生産プロセス改革」を推進
2021年に3代目経営者に就任した今野行生社長は、先代の今野龍美氏が発展させてきた鋼製建具の事業を引き継ぎながら、「生産プロセス改革」(社内)と「新規事業」(社外)の両面で新たな挑戦を続けている。
「生産プロセス改革」としては、ブランク・曲げ・溶接の各工程で加工設備を順次増強し、生産能力の強化と加工領域の拡大をはかった。
ブランク工程には、同社初のファイバーレーザ複合マシンEML-2515AJを導入した。鋼製建具のブランク工程はシャーリングやパンチングマシンで対応するケースが多いが、新たにレーザ加工を採り入れることで自由形状への柔軟な対応が可能になり、仕事の受け皿を広げた。曲げ工程には4m対応のベンディングマシンHG-2204を導入し、長尺・大型製品への対応力を高めた。溶接工程には、ハンディファイバーレーザ溶接機FLW-1500MTを導入。鋼製建具はくつずりなどの一部部材を除き、鉄系材料を使用するが、異分野のステンレス製品・アルミ製品も高品位な溶接ができるようになった。
今野社長は「私が引き継いだときは2~3世代前の加工設備しかなく、それだけで他社と差がついていました。私が目指す『少数精鋭の高付加価値企業』を実現するうえで、生産設備の強化は避けて通れないテーマでした。当時の事業内容からするとオーバースペックだと思いますが、今では思い切った設備投資によってビジネスの幅が広がったことを実感しています。これからも板金加工のトレンドは追いかけ続けていきたい」と語っている。
左:2022年に導入した同社初のファイバーレーザ複合マシンEML-2515AJ。自由形状への柔軟な対応が可能になった/右:4m対応のHG-2204(手前)とHG-8025(奥)が並ぶ曲げ工程
「新規事業」に挑戦 ― 売上拡大・分散化に成功
生産プロセスの強化と並行して、成長をけん引する「新規事業」の立ち上げにも乗り出した。中でも、オーダーメイドの建築内外装や、一点ものの店舗什器といった「装飾金物」の分野は、同社が得意としてきた「鋼製建具」と掛け合わさるかたちで順調に受注が伸びていった。
「当社の規模と業態だと、量産の世界で戦うのは難しい。これまで培ってきた鋼製建具のノウハウを生かし、同じ建築分野で付加価値の高い領域を開拓しようと考えました」と今野社長は振り返る。
相乗効果によって鋼製建具・装飾金物とも成長軌道に乗り、売上高は2020年比で約1.8倍になった。顧客数は大小合わせて約100社となり、5年間で約10倍に増えた。
現在の売上構成は、「鋼製建具」が約70%、「装飾金物」が約20%、工作機械カバーや産業用ステンレス槽などが合わせて約10%となっている。2020年頃までは鋼製建具の大手メーカー2社からの売上が95%ちかくを占めていたが、新規顧客の受注が伸びたことで50~60%まで低下した。1社あたりの依存度も、ピーク時の70%程度から35%程度へと半減した。
「既存のお客さまの仕事を維持しながら付加価値の高い新しい仕事を増やし、事業基盤を強くしながら成長につなげたいという一心で挑戦を続けてきました。ここ1~2年でようやくかたちになってきたと感じます」(今野社長)。
左:鋼製建具の下地のサビ止め塗装まで自社で対応。この後、現地でオイルペイントを行って組み立てる/右:2026年夏にリニューアルする事務所棟の外装CG。コールテン鋼(耐候性鋼)を採用し、表面にさび層が形成される
会社情報
- 会社名
- 中央サッシュ工業 株式会社
- 代表取締役
- 今野 行生
- 所在地
- 福井県坂井市三国町山岸35-26
- 電話
- 0776-82-1595
- 設立
- 1967年
- 従業員数
- 24名
- 主要製品
- 鋼製建具(スチールドア、ステンレスドア、MB、防火扉、自動ドア)、各種建築用金物、ファサード・サイン・金属製什器、工作機械カバー、各種オーダー金属製品
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