一人完結方式のものづくりを行う多能工集団
企業理念は「お客様に喜ばれるもの作り」と「周りの幸せが私の幸せ」
株式会社 新美利一鉄工所
ファイバーレーザ溶接機FLW-1500MTを操作する入社5年の江藤夢香さん
創業以来変わらない企業理念と一人完結方式のものづくり
左から、新美広治会長、新美剛一社長、日下石智彦工場長
㈱新美利一鉄工所は、新美広治会長の実父である新美利一氏が1926年に創業し、1954年に合資会社新美利一鉄工所として設立された。62年間と長きに渡り、合資会社として事業活動を展開し、2015年には社会的信用度の高い株式会社への組織変更を行って、さらなる業務拡大と営業活動の促進に取り組んでいる。
創業当時は「三州瓦」のブランドで全国的に有名な三河地区の瓦製造に関連した窯業機械などの製作にも携わっていた。バブル崩壊前までは家が建つたびに瓦も売れていたが、集合住宅が増え、戸建て住宅もプレハブ構造に変わっていく中で、瓦の需要も減少した。それとともに窯業機械の需要も落ち込み、次第に精密板金・製缶板金などの事業に転換していった。
創業以来変わらないのが、創業者である新美利一氏が掲げた「お客様に喜ばれるもの作り」と「周りの幸せが私の幸せ」という企業理念だ。この理念は2代目の新美広治会長、3代目の新美剛一社長にも引き継がれている。
もうひとつの特徴が、創業以来一貫してきた全工程を一人の作業者が責任をもって対応する多能工職人によるものづくりだ。受注した製品のほとんどの加工を一人完結方式で行う。製造現場の個々の作業者は、自分が担当する製品の図面に基づき、材料の切断から穴あけ、曲げ、溶接、仕上げまで、すべて自分で完結する。
左:ネットワークカメラによって工場設備の稼働状況は事務所からでもリアルタイムに確認できる/右:18名の現場作業者に対する作業指示書が入っているボックス
世の中の役に立っていることが実感できる仕事がしたい
新美広治会長は同社のものづくりの姿勢について、次のように語っている。
「当社は製品に組み込まれる部品を製作しているので、自分たちの仕事が世の中でどのように役立っているのかがわかりにくい。しかし、一人ひとりが一貫して加工することで、お客さまのご要望に丁寧に対応することができます。お客さまから感謝の言葉をいただくこともあり、それが励みとなって楽しくやりがいを持って仕事ができるようになります。少しでも自分たちの仕事が世の中の役に立っていることがわかると、仕事にやりがいを見出すことができ、モチベーションにつながります」。
「仕事を通して社会に奉仕すれば、それが自分のためになり、会社のためになる。会社に利益をもたらし、その利益を分配することで作業者自身の収入も増え、作業者の家族も豊かになる。私は父から、自分が幸せになるためには、周りの人を幸せにしなければいけないと教えられました。だから『お客様に喜ばれるもの作り』をモットーに成長を続けることができました。それは『お客さまに頼まれたら何でもやる』『何でもつくってみせる』という自信にもつながっています」。
左:平板・パイプ・形鋼兼用レーザマシンFO-MⅡ RI3015/右:5軸制御のマシニングセンタなどが並ぶ機械加工工場
会社情報
- 会社名
- 株式会社 新美利一鉄工所
- 会長
- 新美 広治
- 代表取締役
- 新美 剛一
- 所在地
- 愛知県岡崎市東阿知和町字乗越9-36
- 電話
- 0564-46-2955
- 設立
- 1954年(1926年創業)
- 従業員数
- 25名
- 主要事業
- 製缶・板金・レーザ加工
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