大臣賞2賞を九州が独占―第27回優秀板金製品技能フェア
意表を突く板金技術で「ボルト、ナット」をリアルに再現
本業とともに第2・第3の事業の芽が膨らむ
シンエイメタルテック 株式会社
無冠に終った前年のリベンジ
第27回優秀板金製品技能フェア(職業訓練法人アマダスクール主催)に応募した「ボルト、ナット M200」が経済産業大臣賞を受賞したシンエイメタルテック㈱の田原和幸社長は、受賞の喜びを次のように語った。
「2007年度(第20回)に『溶接を主体とする組立品の部』に応募した『スクリューコンベア』と、2012年度(第25回)に『組立品の部』に応募した『昇開橋』がそれぞれ金賞を受賞。『スクリューコンベア』は、独創的な手法が評価され、金賞と『中央職業能力開発協会会長賞』のダブル受賞で、次に受賞するのは大臣賞と心に決めていました。社内では『次は大臣賞を取りにいく』と宣言していました。昨
年は満を持して『刀剣』と題した製品を応募しました。刀剣は、刀工といわれる刀鍛冶職人が丹精を込めて、火床で加熱した鋼を取り出して大槌と槌で叩いて伸ばし、それを折り曲げて火床に入れ、また伸ばす―この作業を繰り返てつくります。それを板金で製作したら、どんなものができるのか、楽しみでもありました。出来栄えも見事で、これなら評価は高いと思っていました」。
「ところがふたを開けてみると『技能奨励賞』。3賞にも選ばれず残念な思いをしました。『造形品の部』に応募したことで、投票されるお客さまも審査員の先生がたにも、我々のコンセプトと技量を十分に理解していただけなかったのでは、との悔いが残りました。製作に携わった社員は『実際に製品を手で触ってもらえたら、その軽さや質感の素晴らしさを理解していただけたと思う』と、無念の思いを語っていました。そこで今回は、無冠に終った前回のリベンジと位置づけ、入社8年目で35歳と若いものの昨年工場長に抜擢した松尾真司工場長をリーダーにして、応募製品の製作に取り組むことにしました」。
松尾工場長は、同社に入社する前は旋盤工として切削加工関連の仕事に従事していたが、8年前に同社に入社。展開・プログラム、抜き、曲げ、溶接と、ひととおりの工程を経験していた。元来、モノづくりが大好きという松尾工場長は、社長から出品する製品のアイデアと製作を一任されると、まずどんな製品をつくるのかを考えた。そこで頭に浮かんだのが、製造現場ではありふれたボルトとナット―それ
もできるだけ大きなサイズのボルトとナットを、ステンレスの板から板金で製作したらどんな製品に仕上がるのか、興味もあってチャレンジすることにした。
ステンレスの板からボルト、ナットを製作
「通常は鉄などを削ってつくるボルトとナットを、ステンレス板を曲げたり溶接したりする板金技術で忠実に再現することで、他の製品にも広く応用できる技術として板金加工が高く評価されたら良いな、と思いました」(松尾工場長)。
製作するボルトとナットのサイズは、ネジ山部の直径が200㎜。製品名は「ボルト、ナット M200」とし、板厚0.8㎜と1.5㎜のSUS304を材料にして製作した。
「課題は、らせん状のネジ山をどのようにして製作するかということでした。当初は60度に曲げた材料をロールしてつないでいくことを考えましたが、ロールすることでV曲げが開き、角度にバラツキが生じてしまうことが分かったので、この方法は断念。次にステンレス板を60度の波形に曲げてからロールすることを考えました。ところが波形に曲げる金型がなく、波形に近い金型を追加工して、波形に曲げることができる特型を製作しました。ところが、でき上がった波形の板をロールしようとしたら、今度はシートに剛性がありすぎて一
発ではR形状になってくれません。そこで徐々に曲げていってR形状に仕上げていきました。らせん状になった60度のネジ山を持つ波形の板を、R形状に製作するため、板厚を薄くする必要があるため、板厚は0.8 ㎜にしましたが、今度はそこまで薄いと溶接歪みが発生したり、それを矯正するための仕上げ作業に手間取り、予想以上に工数がかかりました。また、六角形のボルト頭部をつなぎ目が残らないよう
に溶接、仕上げを行うのにも時間を要しました」。
会社概要
- 会社名
- シンエイメタルテック 株式会社
- 代表取締役
- 田原 和幸
- 住所
- 佐賀県神埼市千代田町崎村551
- 電話
- 0952-44-2150
- 設立
- 1971年
- 従業員
- 41名
- 業務内容
- 半導体製造装置関連の板金および製缶、生産設備関連の一般産業用機械装置の板金および製缶、レーザ加工部品
つづきは本誌2015年5月号でご購読下さい。
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