ベトナムへ単独進出、生産移管
ゼロからのチャレンジ― 板金加工から塗装・梱包までの一貫生産体制を構築
田中産業 株式会社
2013年8月に稼働したタナカベトナムの新工場。敷地面積は約4,000m²、建築面積は2,600m²
大手メーカー 3社のパートナーサプライヤー
1956年に農機具「小型エンシレージカッター」の製造・販売を行うメーカーとして創業した田中産業(株)は、その後、スチール家具・学校用家具などの製造をスタート。現在は主要得意先3社から、スチール家具、空調機器、工作機械の操作パネルの筐体・カバーなどの仕事を受注している。主要3社からの売上が全体の75%を占め、残りは海外からの輸入販売となっている。
同社の最大の強みは“対応力”。現在の主力得意先である大手電機メーカーには見積りに所要工数をすべて開示することで信頼を高め、「御社はパートナーサプライヤー。当社は10年後にもパートナーでいてくれるサプライヤーに仕事を出したい」と高く評価されている。ほかの2社に対しても常に誠意ある対応で信頼を得ており、その甲斐あって、リーマンショック後に一時的に仕事量が落ち込んでも、2009年後半からは目がまわるような忙しさに転じたという。
リーマンショックから3年が経った2011年、同社はベトナムに工場進出を果たす。当初は塗装・梱包のみを手がける計画だったが、2013年には新工場を建設し 、板金加工から塗装・梱包までの一貫生産体制を構築した。しかもこれは得意先の要請があったわけではなく、同社単独での生産 移管であり、中小製造業としては異例の取り組み。また、台湾のスチール家具メーカーの製品を輸入販売する商社的な事業も展開している。さらに円安が進行する現在の環境下では、海外メーカーとの連携による“アウト・アウト”(out-out)のビジネスモデルも模索している。
グローバル対応の取り組みについて、同社の営業活動を一手に担っている田中公典常務に聞いた。
常務取締役の田中公典氏
生産移管を目指しベトナム進出を決断
2009年11月、リーマンショックから少しずつ立ち直りかけた頃、すでにベトナムに進出していた同業者の紹介で、田中常務はベトナムを視察した。これがベトナムとの縁の始まりで、同社はそれ以来、塗装要員としてベトナムから研修生を迎え入れるようになっていった。現在では本社工場の従業員48人のうちベトナム研修生は9人にのぼる。
しかし、せっかく時間をかけて教育しても、研修期間の3年が終わると帰国してしまう。「もったいないと感じました。帰国した研修生の働き口を確保してベトナムで何かできないか、それができればおもしろいのに」(田中常務)と考えるよ
うになっていった。
<pさらに当時、日本の本社工場はパンク寸前。田中常務の積極的な営業開拓が功を奏したことで仕事量が増えており、新たな仕事をこれ以上取り込める余地はなかった。
「ちょうど、ベトナムでもつくれそうなシンプルな形状の商材がありました。日本のスチール家具メーカーへ納めている作業台で、当時、本社工場の生産量の15~20%を占めていました。この仕事をベトナムへ生産移管できれば、本社工場の生産能力にも余裕ができ、新しい仕事に取り組めるようになる。それに、当時の円高環境では、輸入販売によるコストメリットも期待できました」(田中常務)。
パンチングマシンAE- 2510NT。2014年12月に国際協力銀行(JBIC)の「海外展開支援融資ファシリティ」の一環で三島信用金庫との協調融資2,000万円を受け、導入した(左)/日本から移設したベンディングマシン2台(中央)/タナカベトナムの工場内には5S推進のポスターが貼られている(右)
会社概要(ベトナム工場)
- 会社名
- Tanaka Vietnam Co.,Ltd.
- 住所
- Binh Xuyen Industrial Zone Huong Canh Town Binh Xuyen District Vinh Phuc Province,Vietnam
- 電話
- +84(0)-211-3593-969
- 設立
- 2011年
- 従業員
- 45名
- 業務内容
- 精密板金加工、粉体焼付塗装、アセンブリー
つづきは本誌2015年5月号でご購読下さい。
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