事業承継者が活躍する愛知の板金業界
“職人気質”を原点に、精度にこだわった“たしかな製品づくり”
人手不足に対応して作業のマニュアル化・機械化も進める
株式会社 山宝
2021年に開設した「東海工場」で24時間稼働するEML-2512AJ-PDC(パレットチェンジャー・TK仕様)
“精度”の限界に挑戦し続ける
㈱山宝は1954年、名古屋市東区でプレス加工業を営む「㈱山寶製作所」として創業した。1977年頃から工作機械関連の板金加工へシフト。1988年に名古屋市緑区に工場を移転した。
2003年に「㈱山宝」に社名変更し、2004年には現住所に「本社工場」を移転。2010年には本社工場横に「第二工場」を増設した。さらに2021年には、事業拡大により、愛知県東海市に「東海工場」を開設した。
同社が掲げる経営理念は「長年培ってきた技術と経験を生かし、顧客の満足と社会の信頼を得られるように、継続的な改善に努める」。創業以来のノウハウを生かし、工作機械用部品・産業用機械部品など、さまざまな板金加工品を提供している。工作機械の板金加工技術において“精度”の限界に挑戦し続け、板金加工・精密板金加工を手がけることで、付加価値の高い仕事に挑戦している。
左から小島祥嗣統括部長、市野晴基社長、土屋正彦専務
作業のマニュアル化・機械化を進める
2018年に社長となった市野晴基氏は「これから労働力人口は減少の一途をたどっていきます。2030年代後半以降には団塊ジュニア世代が高齢化し、労働力不足がさらに加速します。製造業では自動化・省力化が進み、労働集約的な業態は変革を迫られています。生産形態にもよりますが、板金業界ではリピート率が高く、ロットが大きい製品に関しては、作業のマニュアル化・機械化を進め、外国人材・女性社員・シニア社員が活躍できる仕組みを構築する必要があります。当社でも少なくとも売上の半分は、そうした仕組みで生産できるようにしたい」と語る。
現在の従業員数は役員を含め22名。製造現場には13名が配置されており、そのうち女性の外国人技能実習生が7名、日本人の女性社員が2名と、半数以上を女性が占めている。
ファイバーレーザマシンBREVIS-1212AJ。2024年にレーザマシンLC-1212αⅣNTとの入れ替えで導入した
ベンディングロボットシステムEG-6013ARを導入し、曲げ工程の自動化・スキルレス化を目指した
ものづくりの基本は“職人技術”
「ただ、マニュアル化・機械化が進む一方で、私たちはものづくりの基本を見失いつつあるように感じています。それは、日本のものづくりを支えてきた“職人気質”です。機械化・自動化・ロボット化が進んでも、それを操作するのは“人”です。先端技術を支えるのは、いつの時代も“人”であり、ものづくりの基本は“職人技術”です」。
「当社では専門性を向上すべく、最新鋭の設備を導入しながら、創業以来培ってきたノウハウを生かして“職人技術”を提供してきました。“職人気質”を原点に、“創業の志”をもって、“精度”にこだわった“たしかな製品づくり”に努め、お客さま満足度の改善に取り組んでいます」(市野社長)。
パンチングマシンで切り起こし加工した製品
TIG溶接作業。今後は熟練の技術が必要なTIG溶接をハンディファイバーレーザ溶接に置き換え、スキルレス化を進めることも検討中
会社情報
- 会社名
- 株式会社 山宝
- 代表取締役
- 市野 晴基
- 所在地
- 愛知県名古屋市緑区鳴海町長田18
- 電話
- 052-896-8556
- 設立
- 1954年
- 従業員数
- 22名
- 主要事業
- 工作機械用部品・産業用機械部品などの精密板金加工
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