板金論壇

若手工学研究者のポジティブマインドに期待する

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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「アカデミックリクルート」に力を入れる

2週間の間に40〜41歳の教授2名と准教授1名からお話をうかがう機会がありました。いずれの先生も、レーザプロセッシングや塑性加工といったご自身の研究テーマにアグレッシブに取り組まれていました。昨今、学生の「理工離れ」が指摘されている中で「アカデミックリクルート」をしっかりとされ、優秀な学部や修士の学生を研究室に集め、教育にも熱心に取り組んでいらっしゃいました。

理工系大学は、以前は「講座制」によって学生・院生・助教・講師・准教授・教授と研究室に階層があり、「徒弟=師弟関係」という関係の下で、若い研究者が自由に研究ができなかったり、研究費に恵まれなかったりといった問題が指摘されていました。また、助教から講師、准教授、教授と昇任するプロセスにも不透明性が指摘され「象牙の塔」といわれる独特の雰囲気がありました。こうした環境や雰囲気が若手研究者の創造性やポジティブマインドを委縮させるマイナス要因となったとも言われています。

国立大学の法人化がきっかけ

国立大学法人法の成立により、2004年4月1日以降、「国立大学法人」が設置する国立大学へと扱いが変更となりました。それまでの国立大学は1949年に制定された国立学校設置法に基づいて「国」が設置した、文部省(文部科学省)の施設・機関とされており、予算・組織面での締め付けがきびしかったといいます。大学の運営から研究、教育予算も国が管理するため、研究者は研究に必要な予算を文部省に申請し、採択を待つ流れとなっていました。

独立法人化したことによって規制が緩和され、自主的・自律的に大学運営を行うことが求められるようになりました。その反面、大学が運営予算や研究費を民間企業や公益法人から獲得する努力が必要になり、研究室も自前で外部から研究予算を集めることが必要になりました。

もともと国からの予算が少なかった私立大学の伝統校などは、いち早く講座制を止め、講師以上の研究者たちに独立した研究室を持たせて研究者のイニシアチブを重視することで、優秀な研究人材を集めるように変わっていきました。研究室を立ち上げた研究者たちは、研究費を集めるとともに「アカデミックリクルート」を活発にして学部や修士の学生をリクルーティングしないと研究室が機能しない事態に陥るため、研究のイニシアチブを発揮するために、マネジメント能力が求められるようになっていきました。

つづきは本誌2022年4月号でご購読下さい。

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