板金論壇

日本の科学技術研究の現実を考える

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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1人あたりの研究費は世界16位

世界の研究開発費の国別ランキング・推移(UNESCO統計、2018年データの比較)を見ると、上位3カ国は米国(581,553百万米ドル)、中国(465,162百万米ドル)、日本(171,294百万米ドル)となっており、2位の中国との金額では大きな開きがあります。

しかし、同じ統計にある研究者1人あたりの研究開発費ランキングでは、日本の順位は16位、中国が17位となっています。ここでの科学研究費は研究開発活動に際して投下する人件費、設備投資などの費用・資本的支出の総額となります。この結果だけを見ると、日本の科学研究費は世界と比較しても遜色ないように見られます。

2021年1月、世界レベルの研究基盤を構築するため、令和2年度(2020年度)の第3次補正予算で大学ファンドの創設費用5,000億円を含む補正予算が成立しました。3月には内閣府が、2016~2020年度の科学技術関係予算が総額28.6兆円(グリーンイノベーション基金事業および「10兆円規模の大学ファンド」を含む額)に達し、第5期科学技術基本計画の目標金額26兆円を達成したと発表しました。

また、第6期基本計画(2021~2025年度)では30兆円を目標とすることも発表し、重要な分野や効果の高い施策への重点的な資源配分を引き続き行うとともに、官民の研究開発投資の拡充を目指すとしています。

研究資金・研究時間が減少傾向

こうした数字だけ見れば日本の研究資金は潤沢なように見えます。しかし、実際に研究者に十分な研究費が届いているかというと、よく見えない部分もあります。

多くの研究者が指摘するのは「研究開発費用が極めて少ない」という点です。また、研究に費やす時間が少なく、教育や大学の業務などの非研究分野に費やされる時間が増えているという現実です。

少し前の調査になりますが、2002年から2018年の間に、大学教員の職務時間に占める研究時間割合が46.5%から32.9%に減少したというデータもあります。研究資金に加えて研究時間も不足しているという実態があります。

つづきは本誌2022年1月号でご購読下さい。

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