研究室訪問

世界に存在しない加工法や生産方法を考案し、具体化する

電気通信大学 大学院情報理工学研究科 機械知能システム学専攻 久保木・梶川研究室 久保木 孝 教授

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画像:世界に存在しない加工法や生産方法を考案し、具体化する久保木孝教授

「重点研究開発助成」に採択

天田財団の2019年度前期助成で「重点研究開発助成課題研究(塑性加工)」に採択された電気通信大学 大学院情報理工学研究科 機械知能システム学専攻の久保木孝教授の研究室を訪ね、助成対象となった研究の内容や教育の現状などについて話を聞いた。

久保木教授は1988年3月に京都大学工学部精密工学科を卒業。同年4月に京都大学大学院工学研究科に入学し、1990年3月に修了。同年4月に住友金属工業株式会社(現:日本製鉄株式会社)に入社、2002年12月までの12年間を研究員として勤務した。

2003年1月、電気通信大学電気通信学部助教授に就任。2007年4月から2010年3月まで同大学の電気通信学部准教授、2010年4月から2013年3月まで同大学大学院情報理工学研究科准教授、2013年4月からは同大学大学院情報理工学研究科教授を歴任してきた。

ユニークな加工法の創造を目指す

久保木教授が所属する久保木・梶川研究室は、塑性力学に基づく新しい加工法を考察し、さらなる向上を目指して、新しくユニークな加工法の創造を目指している。そして、これまでの加工限界や成形能率を超えるように、数値解析と実験を重ね、原理の解明と産業界へ技術をフィードバックする応用研究を行っている。既存の加工法の最適化手法に加え、新しい塑性加工法の開発も行っている。

研究テーマのひとつに「精密冷間引抜き加工」がある。従来、細い伸線をつくるにはさまざまなサイズの穴型ダイスを用いて引抜き加工を行うのが通例だったが、この新しい方法では穴型ダイスを使わずに、2つの凹ロールダイスにらせん運動をさせることで、フリーサイズの伸線加工が行える。ほかにも、ダイスを使って飲料缶のような先が細くなっているものを成形する回転口絞り加工では、ダイ スに「逃げ」と呼ばれる空間をつくり、口絞り率を従来の10%から40%にまで向上させた「逃げ有りダイスを用いた回転口絞り加工」などの研究がある。

研究室では、これまでにアマダ、日本製鉄、コベルコマテリアル銅管、下村特殊精工、宮﨑機械システム(研究受入代表:梶川助教)、山内エンジニアリング(研究受入代表:梶川助教)などの企業と共同研究を幅広く行い、現場に即した塑性加工の研究を行うことで産業界に貢献している。

次の展開として、複合材への対応も考えている。複合材はハイテク材料などにも利用されているが、加工が難しく、塑性加工法はいまだに確立されていない。そこで、これまでの経験と知見を活かした研究を進めている。医療関連では医療ロボット用自在鉗子など、微細加工された部品を同研究室の精密な塑性加工法を応用して加工する研究を進め、製造コストを抑え、広く普及させることを計画している。

現在の研究室メンバーは、久保木教授、梶川翔平助教、村田眞特別顧問、秘書の梶正子氏のほかに、博士後期課程2年が1名、博士前期課程2年が3名、博士前期課程1年が5名、学部学生が6名の19名となっている。

画像:世界に存在しない加工法や生産方法を考案し、具体化する左:損耗のメカニズムを研究するための金型/右:大学の共同利用設備である工作室には各種工作機械が並ぶ

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