視点

自社の競争優位を保つピボット(方向転換)の重要性

LINEで送る
Pocket

新型コロナウイルスの感染拡大で世界中が戦々恐々としています。3月2日からは全国の小・中学校、高等学校が臨時休校しています。3月19日までは、全国でさまざまなイベントの延期・中止が政府から要請されました。大相撲をはじめとした各種スポーツも、延期または無観客での開催を余儀なくされています。

今後、国内での感染拡大がさらに進めば、企業の休業措置なども出てくることで、国内経済への影響はリーマンショックや東日本大震災をしのぐ規模になる可能性があります。年初にはまったく予想されていなかった事態だけに、当惑する企業経営者も多いと思います。とりわけ製造業はテレワークを実施することは現実的ではありません。どうしても人手が必要になるので、自宅待機のような事態になると影響は深刻です。

しかし、企業経営者が考えなければならないのは新型コロナウイルスのような想定外のリスクに対するリスクマネジメントだけではありません。先々の環境変化にどのように対処するかという本質的なマネジメントが重要です。

先日、若い3代目経営者とその件で議論になり、いろいろなことを教えていただきました。その方は、今取り組まなければならないマネジメントのポイントとして以下の9項目 ― ①時代の変化を先読みする、②自社の強みを再認識する、③強みを軸にピボット(方向転換)する、④強みを発信する、⑤異分野と対話する、⑥稼いだ金を研究開発投資に回す、⑦国の制度を知り活用する、⑧規模の小ささを克服する工夫をする、⑨資金調達を挙げてくれました。

その方は「『こんなに変化が速い時代はない。しかし将来から見たら、こんなに遅い時代はない』ということになります。デジタル化と、それにともなう創造的破壊の波はグローバルに広がっています。消費者の多様化やロイヤリティー低下により、製品ライフサイクルは年々短くなり、ライフサイクルが3年未満の商品の比率は10年前の2倍ちかくになっています」。

「さらに、既存の業界構造を超えたトレンドによってコンバージェンス(同質化)が加速し、業種の壁が取り除かれてきました。また、Mobility(移動手段の多様化)、Energy(省エネ化)、Blockchain(分散型ネットワーク化)、5Gの急激な普及で、情報処理のスピード・コストが激変、製造業のサービス化が浸透し始めています。市場では、流行に敏感で、みずから情報収集を行い、いち早く採用・受容する消費者 ― アーリーアダプターの動向次第で多くのユーザーの消費行動が左右される事象が起きています。そしてそうした動きを予見することも困難になっています」。

「さらに、スタートアップ企業を中心に、企業の成長スピードが劇的に変化。米国では時価総額10億ドル達成までに要する時間が10年前と比べ10倍にもなっているといいます。そして消費財・生産財を問わず、いわゆるGAFA+M+N(Google・Apple・Facebook・Amazon+Microsoft+Netflix)、BATH(Baidu・Alibaba・Tencent・Huawei)などプラットフォーマーと呼ばれる企業の影響力が高まっています」。

「板金業界を含め、製造業のような伝統的な企業がこの変化を乗り越えて存続・成長するためには、みずからも変化の波に乗るべく変容する必要があります。そして自社の強みを軸にした『賢明なピボット』を行う必要があります」と話していました。

変化の時代に自社の競争優位を保つための方法論は百人百様です。目の前のリスク対応も必要ですが、自分の会社は存在する理由があるのか、根本的な企業経営をあらためて問い直す必要があるとも感じました。木を見て森も見ることの大切さを教わりました。

LINEで送る
Pocket

関連記事

視点記事一覧はこちらから