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「2019年度天田財団助成式典」招待講演

生体吸収性マグネシウム合金の革新的レーザダイレスフォーミング

東京大学 生産技術研究所 古島 剛 准教授

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マグネシウム合金管の薄肉細管化

画像:生体吸収性マグネシウム合金の革新的レーザダイレスフォーミング東京大学生産技術研究所・古島剛准教授

本研究は芝浦工業大学の吉原正一郎教授、首都大学東京の清水徹英助教と3名で行ってきた。

2000年代以降、生体内で吸収分解される医療用材料としてマグネシウム合金を利用できないかと注目されている。われわれは、血管狭窄を治癒するためのステントにマグネシウム合金を使えないかという点に注目した。治癒後に取り出す必要がないのもマグネシウム合金のメリットだ。

目標に掲げたのは、ステント用の生体吸収性マグネシウム合金を用いて、血管内に挿入可能な極細かつ薄肉の管材をつくること。課題としては「微細薄肉管の創製の問題」と「機械的性質・腐食特性の制御の問題」の2つが挙げられ、前者が私の担当だった。

成形性が低いマグネシウム合金の微細・薄肉加工は難しい。細管化もそうだが、薄肉化が特に難しい。一般的なマグネシウム合金細管のつくりかたは、鋳造ビレットをつくり、管押出し加工、ダイス引抜き加工をして、熱処理しながら薄肉細管化を目指す。問題は押出しで、押出し比の関係でどうしても厚肉化してしまう。ダイス引抜き加工も1パスでの断面減少率は冷間で5%、温間で15%と低い。

われわれは、ダイレス引抜き加工に着目した。原理は簡単で、高周波誘導加熱やレーザを使って素材を局所的に急加熱する。その状態で引っ張ると、加熱した部分にくびれが生じる。引っ張りながら後ろを押していくことで材料径を一様に絞ることができる。

断面の減少率は、押していく速度のV0、引張り速度のV1の比でコントロールできる。そのため、金型を使うことなく、フレキシブルに断面積の減少率を制御できる。

局部加熱を行うとともに、内部にマンドレルを挿入するセミダイレス方式により、内径の減少を抑制しながら、さらに薄肉化できる。

材料はAZ系のマグネシウム合金と、ZM系のマグネシウム合金を使っている。

また、マンドレル径(dm)と内径(d0)の比を変えて実験をしている。dm/d0が0.7以下だと、引抜きによって減少する内壁とマンドレルが接触しないため、フルのダイレス引抜きと同様の状態となり、断面減少率は1パスで60%くらい。最適なdm/d0を選べば1パスで70%もの断面減少率を得られる。

つづきは本誌2020年3月号でご購読下さい。

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