特集

第31回優秀板金製品技能フェア 優秀作品紹介

「“一歩踏み込めるチャレンジャー”でありたい」

木工技術「組子」の技法を金属に適用 ― 中央職業能力開発協会会長賞を受賞

株式会社 荏原精密

LINEで送る
Pocket

画像:「“一歩踏み込めるチャレンジャー”でありたい」中央職業能力協会会長賞を受賞した「灯篭」(アルミ・真鍮・ステンレス、W172×D172×H246㎜)

中央職業能力開発協会会長賞を受賞

画像:「“一歩踏み込めるチャレンジャー”でありたい」「“一歩踏み込めるチャレンジャー”でありたい」と語る中島一郎社長

「第31回優秀板金製品技能フェア」(以下、板金フェア)の「組立品の部」に応募した㈱荏原精密「灯篭」が中央職業能力開発協会会長賞を受賞した。同賞は、卓越する技能を用い、独自の手法を開拓したと思われる作品に授与される。

「灯篭」は、欄間や障子などに用いられる日本の伝統的な木工技術である「組子」の技法を金属に適用することに挑戦した作品。組子と同様、溶接・接着はいっさい行わず、嵌合によって組み立てられている。さらに、高強度な金属ならではの薄さや、金属材料(アルミ・真鍮)の質感と色彩を生かし、木工では実現できない細かな模様や独特の和柄を表現している。構造はシンプルだが、1つひとつのパーツにズレやひずみがわずかでもあると嵌合できなかったり反りが発生したりするため、高い加工技術が求められる。

3月9日に開催された表彰式の講評で、審査委員会の安田克彦副委員長は「日本古来の木組みの技法で、金属の細かい部材を組み合わせ、非常に重厚な作品に仕上げている。一部に真鍮板を曲げた部材を使用することで、色彩の変化を与えるとともに、スプリングバックで作品全体の剛性をさらに高める効果も考えられている」と評した。

画像:「“一歩踏み込めるチャレンジャー”でありたい」左:組子の技法を用いて製作したパネル。銀色の部分がアルミ、金色の部分が真鍮を使用している/右:日本の伝統的な木工技術である「組子」の技法を金属に適用。金属ならではのR形状や質感・色彩を生かし、独特の模様を表現している

量産試作を得意とする精密板金加工企業

㈱荏原精密は、弱電関係の量産試作を得意とする精密板金加工企業。板金加工だけでなく、プレス加工、マシニング加工、ワイヤ放電加工、研削加工などの複合加工に対応できることが大きな強み。精密プレス金型の設計・製作にも対応する。

主な製品は、業務用コピー機・プリンターといったOA機器関連、自動改札機・券売機・郵便仕分け機といった社会インフラ関連、現金処理機や紙幣計数機、測定器などの筐体やメカ部品。2012年頃からは、自動車用試作部品や鉄道車両用内装品なども手がけるようになった。

一番の得意先である大手OA機器メーカーとは、1972年の創業から現在まで取引を続けている。創業当初は、量産品のプレス加工を中心に手がけてきた。1988年頃からは、得意先が量産品を海外生産へと移行していったことをきっかけに、プレスから精密板金へとシフト。それまでは量産が90%、試作が10%の比率だったが、精密板金へとシフトしていくことで徐々に試作のウエイトが高まり、現在では量産が30%弱、試作が70%強となっている。

2012年頃からは板厚9㎜の軟鋼をレーザで加工して製作した積層構造の簡易型による絞り加工を採り入れ、数十~数百個の量産試作の仕事で威力を発揮。今では同社の特徴的な加工技術となっている。さらに、熱処理材の金型製作にも対応するため同時5軸マシニングセンタを導入、ひとまわり大きな製品の絞り加工に対応するためサーボプレスSDE-1120を導入し、対応製品を拡大している。

画像:「“一歩踏み込めるチャレンジャー”でありたい」左:曲げ工程。2014年にHG-1303、HG-8025、EG-6013×2台を一気に導入した/右:工場内に設置されたデジタルサイネージ。ジョブリストがリアルタイムで表示され、計画的に作業できる

会社情報

会社名
株式会社 荏原精密
代表取締役社長
中島 一郎
住所
神奈川県横浜市港北区箕輪町2-19-6
電話
045-562-4351
設立
1972年
従業員数
28名
主要事業
OA機器、ATM・現金処理機、自動改札機・郵便区分機などの社会インフラ関連機器の内部部品、自動車部品、鉄道車両部品、航空機部品、船舶部品などの精密プレス加工・精密板金加工・絞り加工・機械加工、プレス金型・治工具の設計・製作
URL
https://www.ebaraseimitsu.co.jp/

つづきは本誌2019年6月号でご購読下さい。

LINEで送る
Pocket

関連記事

特集記事一覧はこちらから