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良好な日台関係に尽くした先人の偉業

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3月初旬に台湾板金業界を取材してきました。訪れた台中市の気温は32度、汗ばむ陽気でした。

工作機械、半導体・FPD産業が盛んな台中市周辺の板金業界は、日本と同様に電子機器製造装置や工作機械向けの受注が好調で、今回取材した3社のサプライヤーでは、2017年は前年比10~30%の増収となっていました。2018年もこの基調に変化はなく同10%以上の増収を見込んでいました。

Industrie 4.0に対応してERP(統合基幹業務システム)をMRP(資材所要量計画)と連携させ、材料手配の自動発注システムを構築している企業もありました。さらに、3次元CADを活用したODM/OEM受注を進めるために設計開発部門を強化していました。

また、製造現場で3D PDFや3Dビューワー、展開図をタブレットPCやモバイル端末で見られる仕組みを構築。3年前にAndroid対応のタブレット端末を導入し、ペーパーレス化を実現した企業は、Windowsネットワークに対応できないとERPとの連携が取れないため、Windows PCへの入れ替えを計画。その過程で機械設備のNC装置側からの各種ステータス信号をリンク、自動着完が取れる仕組みを検討しており、機械メーカーの協力を強く要望されていました。

Windows PCの端末を導入して“見える化”を進めているサプライヤーでは、QRコードを活用して着手完了情報を入力できるアップグレードを計画中でした。今回取材したどのサプライヤーもERPシステムと連動した情物一体管理を行うことで、スマートファクトリーを目指していました。

2013年から延べ11回訪台し、50社あまりの板金サプライヤーを取材してきましたが、訪問するたびに新鮮な驚きを感じます。そして経営者の多くが日本人をリスペクトしている姿勢に感動します。

台北市内で会食した業界の長老から、「台湾紅茶」をいただきました。台湾のお茶としては「阿里山茶」が有名ですが、最近は「台湾紅茶」も日本人観光客に人気のようです。

その「台湾紅茶」に日本人が深く関わっていることを、今回初めて教えていただきました。日本統治下の台湾において、紅茶の栽培に尽力した新井耕吉郎のことです。新井は終戦後も台湾に単身残り、マラリヤにより42歳という若さで亡くなるまで、紅茶各種の研究・普及活動で台湾紅茶産業の発展に大きく寄与。その偉業を称え「台湾紅茶の父」または「台湾紅茶の祖」と呼ばれているそうです。

以前、この方から、台湾の烏山頭ダムの建設に関わった八田與一(はったよいち)のことを教えていただきました。台湾総督府の土木技師であった與一は、台湾南部にある嘉南平野に安定した水を供給する灌漑設備を建設することによって、この地を台湾の穀倉地帯にできると考えました。台湾南部の嘉義から台南まで広がる嘉南平野に素晴らしいダムと大小さまざまな給水路をつくり、15万ヘクタールちかくの土地を肥沃にし、100万人ほどの農民の暮らしを豊かにした人物としてよく知られ、台湾の地元の人々に神様のように崇められ、台湾の歴代総統も墓前参拝に訪れるほどの日本人だと知りました。與一の生誕の地である金沢に多くの台湾人観光客が訪れている理由が理解できました。

2011年の東日本大震災後に、台湾国民からの義援金が200億円も集まったことが新聞などで紹介されていましたが、日台関係がきわめて親密な背景には、台湾のために尽くした多くの日本人の偉業があったということを忘れてはいけないと思います。戦争という悲惨な歴史とともに、両国の国民がお互いをリスペクトして、学びの対象とすることが必要だと思います。

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