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従業員エンゲージメントまで考えた暑さ対策

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連日うだるような暑さが続き、東京都心でも最高気温が37.7℃に達した日もあった。7月の35℃以上の猛暑日は13回で、2001年の7回を抜き、猛暑日の最多記録を塗り替えた。

猛暑は日本のみならず世界中で観測されており、世界気象機関(WMO)は6月が史上最も暑くなり、7月7日には世界の平均気温が最高値を更新したと発表した。ここ数年は北半球を中心に「熱波」が常態化、干ばつ・豪雨など気象の「極端化」が顕著になっている。また、7年ぶりに発生したエルニーニョ現象が世界平均気温をさらに高める可能性があるとの懸念を示した。WMOの担当者は高温傾向をもたらしている現在の気象現象については2024年まで続くと予想しており、「地球にとって心配なニュースだ」とコメントしている。

最近は企業と従業員との間での確固たる信頼関係を構築し、従業員エンゲージメント(従業員の会社に対する貢献意欲)向上の一環として働きやすい職場環境への改善を進め、事務所のみならず工場内にも冷暖房の設備を整えている企業も増えてきた。来客などのある事務所はもとより、多くの実務を担当する工場内に冷暖房装置を設備することで労働環境の公平さ、生産性向上に配慮している。

空調設備のほか、地下水を工場内の天井に循環させて天井から冷気を吹き出す装置を導入する企業や、屋根に太陽光発電システムを設置すると屋根材が直射日光を受ける面積が減るため一定の断熱効果が期待できるとして太陽光発電システムを設置する企業も増えている。さらに、遮熱効果のあるペンキを屋根に塗布したり、日陰をつくるツタや木などの植栽を推進する企業も現れている。

しかし、工場内に目を向けると天井が高く、溶接工程ではアーク溶接などの熱加工をともない、塗装ラインには乾燥炉がある。レーザ加工に使用するチラー、窒素ガス発生装置(PSA)、コンプレッサーなど、稼働にともなって熱源となる装置も多いため、工場内は全体的に暑い。

コージェネレーションシステムを活用した「排熱投入型吸収冷温水機」を導入して冷房に活用する企業もある。それだけに工場全体を一定温度に保つためには、それ相応の装置の導入費用、エネルギーコストの上昇を覚悟しなければならない。

「従業員が会社と仕事のそれぞれに対して誇りをもつことにもつながると思うので、工場内に空調設備を導入するとともに、溶接や塗装作業に携わる従業員にはファン付き作業着を貸与しています」と配慮する経営者もいる。

この企業では職場環境の改善に取り組んで以降、退社する従業員がほとんどいなくなった。若い従業員が「うちはこんな会社だから来いよ」と友人を誘い、何人かが入社するという副次的効果もあったという。また、夏場でも作業性が向上することで生産性が改善、納期遅延やポカミスによる不良も少なくなった。

それでも従業員エンゲージメントの改善まで考えている企業はまだまだ少ない。ユニークな取り組みだと思ったのが、デマンドコントロールで電力ピーク値をオーバーしそうになると、生産とは直接関わりのないエアコンをいったん停止、停止のたびに冷凍庫に保管しているアイスキャンディーを従業員に配っていた。電力消費の多い夏場には、時々こうした事態を招くこともあるので、従業員のモチベーションを維持するためのウイットのある対処のしかただなあと感心した。

暑さはまだまだ続く。一過性の暑さ対策ではなく、従業員エンゲージメントまで考えた対策を考えるべきだと思いました。

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