視点

経営者の「ミッション」「パッション」「アクション」

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新型コロナウイルス感染症が5類に移行してから、町には活気が戻ってきた。出張で利用する航空機や新幹線も大勢の乗降客でにぎわっている。日常が戻ってきたことを実感している。取材でおうかがいする企業でも、応接室にあった飛沫防止ガードが取り除かれ、検温やアルコール消毒液の類もなくなった。中には「マスクなしで取材していただいて結構ですよ」と、こちらに気を遣ってくださるお客さまもいる。

感染者数はゆるやかな増加傾向にあるものの、中国のような爆発的な感染拡大には至っていない。このまま平穏な日々が過ぎていくことを願っている。

板金業界に関して言えば、昨年までは増産に次ぐ増産で繁忙だった半導体製造装置関連の仕事が停滞気味だ。SEMI(国際半導体製造装置材料協会)の3月の発表によると、世界の半導体需要の減衰と民生機器やモバイル機器用半導体デバイスの在庫増に起因し、2023年の半導体前工程向け製造装置への投資額は前年比で22%減少すると予測されている。

さらに、昨年10月には米国が経済安全保障上の観点から対中半導体輸出規制を導入。日本政府も3月31日に半導体製造装置23品目を輸出貿易管理対象に追加すると発表し、これによって輸出の40%を占めていた中国向け半導体製造装置の需要が大幅に減少するという見方が出た。半導体製造装置関連業界の年内回復はかなり難しくなっている。

TSMCの熊本工場やキオクシアの四日市工場、北上工場の建設に関連したクリーンルーム関連の仕事は、一部に影響はあったものの、秋口以降は順調に回復すると見られている。また、ラピダス千歳工場の第1棟の建設が9月から始まる。総投資額が5兆円とも言われるだけに、製造装置以外の板金関連需要も期待されている。しかし、関連する板金サプライヤーの間では受注の年内回復は難しいとの見方が一般的だ。

建設機械関連は好調で、日本建設機械工業会によると、2023年度通年の出荷金額は前年度比7%増となり過去最高を更新すると予測されている。「内需」は安定した公共投資の継続により同3%増が期待されている。「輸出」も土工系機械を中心に伸び、同9%増になると予測されている。建機関連のサプライヤーも繁忙な状況が継続している。

建設機械と同様に景気の先行指標とされる工作機械受注(日本工作機械工業会)は、2023年5月までの暦年累計で前年比14.6%減となっているものの、積み上がった受注残により生産の落ち込みは少ない。食品加工機械、医薬錠剤、医療機器関連も好調に推移している。

それだけに業界関係者の表情も明るいが、明暗もある。最近は発注元も設計~加工~組立~塗装までのワンストップ対応ができるサプライヤーに仕事を集約する傾向がある。また、単純形状の板金製品をWebの部品調達サイトを使って最適調達する傾向も強まっており、サプライチェーン自体が大きく変わろうとしている。それだけに「継続取引だから安心」「先代からの信頼があるから大丈夫」といった受け身の姿勢では発注元の調達方針の変化に即応できない場合がある。

新規獲得を狙うバイタリティーあふれる企業や経営者は、チャンスをみずからつくり出して、市場を開拓している。安穏と仕事を待つだけの「待ち企業」は自然と淘汰されてしまうおそれがあり、変化対応力を備えることが必要になっている。

経営者や工場長、営業担当者といった主要メンバーの「ミッション」(使命)を明確にして、それぞれが「パッション」(情熱)を持ってその任にあたり、「アクション」(行動)を起こすことが必要になっている。

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