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業界の2極化進む―会社は何のために存在するのか

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年が明け、板金業界では数年ぶりに明るい顔をした経営者の方々にお会いすることが増えた。

こうした企業の多くで、2014年度の売上高が過去最高を記録する見込みとなっている。受注単価こそリーマンショック前に比べて80~90%にとどまっているものの、社員の数を増やさず、自動化投資で損益分岐点比率を引き下げてきた経営合理化努力の結果、収益面も大きく改善、増収増益基調となっている。

電気料金の値上げや円安による原材料価格の上昇など、コストアップ要因を受注単価に転嫁することはままならない状況だが、一部業種では受注好調で発注量が増えているため、採算性の悪い仕事は「お断り」という選別受注ができる環境も生まれている。結果として価格転嫁も徐々にではあるが認められ、引合いに対して強気に対応するサプライヤーも現れている。

特にこうした傾向が著しいのが、工作機械や半導体製造装置業界だ。工作機械業界は2014年の受注総額が史上2番目の水準となる1兆5,000億円超えを記録、2014年下期の受注推移は月を追って上昇した。「ものづくり補助金」や、「生産性向上設備投資促進税制」による一括償却など、アベノミクス効果が大きい。

また、携帯端末(スマートフォン)の増産により中国向けの輸出が拡大していることも影響している。半導体製造装置もスマートフォン向け半導体の生産が好調、直近では8インチウエハーに対応した中国の仕事が特急仕事で増えており、仕事を引き受けるサプライヤー探しに発注元が懸命になっているという話も聞こえてくる。

無論、スマートフォン向けの仕事は一時的と考えられているが、中国市場でアップルを超えた小米科技(Xiaomi シャオミ)などの台頭で拡大している。一気に価格競争時代に突入したことで、しばらくは設備投資が活発化するという見方もある。中国特需という一時的なものであっても2015年いっぱいはこの傾向が継続するのではないか、という予測がある。工作機械も半導体製造装置関連も年央までは、今の好調が継続すると見られる。

しかし、こうした好調業種に関連し、選別受注による増収増益基調で業績堅調なサプライヤーの数が、かなり少ないことも事実。こうしたトレンドが板金業界に総じて当てはまるかといえば、現実はそうではない。いわゆる2極化傾向が顕著になって、自動化投資を行い、コスト競争力を備えてきた企業などに仕事が集中する傾向が強い。押しなべてすべての企業が好循環に仕事を受注することはできない。好調な企業の大半が年商では10億円超え、場合によっては15億円から20億円に手が届くところまで売上を伸ばしている。

小誌では10年以上前から、これから成長が見込まれるのは加工から溶接、塗装、組立、電装組み込みまでに対応できるセットメーカー「板金ゼネコン型企業」である、と主張してきたが、いよいよこの仮説が具体的になってきた。

板金業界の企業数は国内では2万4,000~2万8,000社程度あるといわれてきた。しかし、現在ではその半分ちかくの1万4,000社程度にまで減少、実際にアクティブに事業を行っている企業はさらに減って、5,000~6,000社と見られている。そして、今後はこの社数がさらに減っていくと見られている。

国内板金製品の市場規模は3~4兆円と考えられてきただけに、年商10億円企業ならば、板金サプライヤーの数は3,000~4,000社あれば十分に国内市場を賄うことが可能で、今後は海外の仕事をいかに取り込んでいくかが重要になってくる。

自社が何のために存在し続けるのか、そのことが問われている。

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