特集

高い国際競争力を備える台湾

台湾トップの工作機械メーカー、台中精機・黃明和董事長に聞く

為替対応で苦戦を強いられる台湾工作機械業界、産業クラスター「M-TEAM」で高付加価値化を目指す

台中精機廠 股份有限公司

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画像:台湾トップの工作機械メーカー、台中精機・明和董事長に聞く創業61年目を迎える同社の創業者の銅像と創業当時に製造していた旋盤

台湾トップの工作機械メーカー

台湾の工作機械産業は、2013年で世界7位の生産高を誇り、電子産業と同じく台湾を代表する産業である。しかし、他の産業と同様、欧州や日本の製品と比較すると、製品レベルが一段低く、ハイエンドに上がれないという課題を抱えている。

2013年の台湾の工作機械は生産額、輸出額とも前年比16%減となった。輸出額の1/3を占める中国向けが、中国経済の減速によって落ち込んだことや、欧米市場においては円安によって日本製工作機械との価格差というアドバンテージが薄れてきたことの影響が大きい。

台湾製工作機械の強みはボールネジ、LMガイドをはじめ、工作機械に使用するすべての部品を国内で生産・調達できる総合的サプライチェーンを持っていることだ。こうしたサプライチェーンが産業クラスターとして、台湾中部に集積していることが大きなポイントでもある。

そこで、今後の台湾工作機械業界の発展について、台湾工作機械業界のリーダーの1人でもある台中精機廠股份有限公司(Victor Taichung)の黃明和董事長に話を聞いた。

1954年に創業され、昨年11月で創業60周年を迎えた台中精機は、840名の従業員を抱える台湾工作機械業界のトップメーカー。同社は1998年に財政危機に直面し、台中地方院は2000年に台中精機の再建を認めた。67億元の銀行債務は2018年に完済予定だったが、業績好調により2014年中に払い終えた。

2003年に運営本部を設立し、研究開発、人材育成、財務管理に関する資源を台湾に配置。製造は台湾と中国・上海で行っている。さらに、ボーダーレスにタイムリーかつ最適な開発・製造体制を実現するため、Visual C#を使った統合開発環境であるICTプラットフォームを構築。新製品の製品設計から製造・使用の段階まで、環境適合性と省エネを考慮して開発するようになった。

また、横形旋盤、連結式ガントリーロボットセルなど、ユーザーオリエンテッドに開発された商品群を、オーダーメイド機種としてシリーズ化、生産性の向上を図っている。

8年前には、政府の後押しもあって、永進機械、台灣麗馳、百德に同社を加えた工作機械メーカー4社、ならびに40社余りのパーツ関連機器メーカーで産業クラスター「M-TEAM」を結成。これにより、4大メーカーは競争力を向上させ、発展に成功している。さらに20年前に板金工場を建設、台湾工作機械メーカーとしては唯一、工作機械カバーの内製化にも取り組んでいる。

画像:台湾トップの工作機械メーカー、台中精機・明和董事長に聞く台中精機の黃明和董事長

過去の10 年は成長・発展、これからの10 年は厳しい

―台湾の工作機械産業は世界第7位の生産国となり、さらに生産量の80%余りを輸出する世界第4位の輸出国です。台湾工作機械業界の将来をどのように見ていますか。

黃明和董事長(以下、姓のみ) 台湾工作機械業界の歴史は60年以上あります。台中精機も私の父が1954年に創業し、昨年11月に60周年を迎えました。台湾の工作機械業界が急速に発展したのは2003年以降であり、この10年で最も成長・発展しました。しかし、2015年以降の動向は、楽観できません。日本の円安が影響するからです。この10年は、台湾が得意とするミドルレンジの工作機械に関して、日本製と比較して30~40%の価格的なアドバンテージがありました。ところが昨年後半からの円安で、このアドバンテージがほとんどなくなってしまいました。そのために欧州、米国、ASEAN市場では、お客さまが日本製を購入されるケースが目立っています。また、ミドルレンジ以下の分野では韓国、中国メーカーとの競争も厳しくなっています。当社は工作機械のみならず射出成形機も製造・販売していますが、こうした機械も中国製にシェアを奪われています。中国ローカルの製品もありますが、最近は日系メーカーも中国生産を始めています。Made in ChinaでもJapanブランドなので、こうした機械に契約を奪われています。当社も工場のマザーマシンとして日本製工作機械を導入していますが、円建て取引なので、為替の変動がよくわかります。以前は台湾製に比べ、30%程度高かったのですが、今はほとんど変わりません。台湾のお客さまから見ると、価格面で大きな差がなければ、品質が安定している日本製を導入したいと思うのは当然です。今の円安傾向がしばらく続くと考えられるので、今年から数年は厳しい環境が続くと考えています。

つづきは本誌2015年2月号でご購読下さい。

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