板金論壇

スマホ市場の隆盛と米国で感じた変化への対応力

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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富士フイルムのDNAに学ぶ

iPhoneをめぐるNTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの国内3大キャリアの販売競争が熾烈になっている。特に後発のNTTドコモは強力な販売ネットワークで、他のキャリアからの乗り換えを積極的に進めている。他の2社も「攻撃は最大の防御」と、これに対抗する販売を展開、激戦となっている。

スマートフォン(以下、スマホ)の世界的な市場拡大によって、スマホに搭載されるフラッシュメモリの需要が伸びている。この分野で世界2位の東芝が、三重県四日市工場第5製造棟の第2期分の建設を昨年8月から着工、早ければ今年の8月から稼働を始める。製造は米国のメモリー製造会社であるサンディスクと協業し、工場と生産設備に4,000億円の巨費を投じる。この設備投資がトリガーとなって、国内の半導体製造装置メーカーは昨年8月以降から生産が上向き、久しぶりに繁忙感が拡がっている。

スマホを中心とした携帯端末市場の拡大は、産業界に大変動をもたらしている。中でも大きいのがスマホに搭載されているカメラ機能が静止画、動画ともに高度化していること。とりわけ静止画に関しては、今やコンパクトデジタルカメラと同等の高解像度で撮影できるようになっている。その結果、プロユースを除くコンパクトデジタルカメラは販売が苦戦している。

1988年に富士フイルムが世界初のデジタルカメラを発表してから15年。携帯電話にカメラ機能が搭載されるまで、デジカメ需要は大きく伸びた。ところがスマホのカメラ機能に高性能ズームや手ぶれ防止機能までが搭載されるようになって、コンパクトデジタルカメラの需要は激減。デジカメ各社はコンパクトからデジタル一眼レフやミラーレス一眼などの高級機種へとシフトしていった。

富士フイルムは、写真フィルムメーカーとして、2012年に倒産したイーストマンコダック(米国)と激しいシェア争いを展開してきた。写真フィルムの需要は2000年を100とすると、2012年には1ケタにまで減少。この激しい市場収縮によって、米国の名門企業だったイーストマンコダックは同年、倒産した。その一方で富士フイルムは、1970年代にデジタル化に不可欠な光信号を電気信号に変換するCCD(電荷結合素子)の自社開発に取り組み、1988年に世界初のデジタルカメラの開発に成功した。

ピーク時、同社の利益の2/3は写真フィルム事業で構成されていた。同社がそのビジネスに固執していれば、イーストマンコダックと同じ道をたどった可能性は高い。

しかし、同社は写真フィルムメーカーでありながら、他社に先駆けてデジカメの製品化に成功した。経営の神様といわれるピーター・F・ドラッカーは、企業経営に必要なことは、マーケティングとイノベーション、そして“顧客の創造”であると述べている。富士フイルムは市場を観察(マーケティング活動)することで変化の兆しを察知すると、それまで自社が手がけていた技術開発(イノベーション)の中から新たな市場創造(“顧客の創造”)につながる製品開発に取り組むという、変化への対応力を持っていたからこそ継続的な発展を成し遂げたといえる。

つづきは本誌2014年1月号でご購読下さい。

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