視点

夢と希望にあふれた日本再建に必要な勇気が持てるように

LINEで送る
Pocket

4月からの消費増税前の駆け込み需要で、年末・年始商戦は活発だった。

4月以降になれば、駆け込みの反動で消費需要が落ち込むことは店のほうでも承知している。さらに消費者――特にバブル崩壊後に青春を送った30代の消費者は、年末に発表された新商品が4月を過ぎれば売り切りで増税分以上に値引きされると考えているので、機能や価格を比較検討するために店頭の販売員に細かな質問をしながら品物選びを熱心に行っていたのが印象的だった。オイルショックを経験し、店から品物が消えた経験を持つ我々のような熟年世代は、増税前に買い替えないと、という慌ただしさだけで来店している。このあたりにも世代間の消費に対する考え方のちがいを見たような気がした。

ところで、GDPの60%を占める個人消費が堅調に推移する中で、今年の民間設備投資はどのように推移するのだろうか。政府は平成26年度の税制大綱の中で、生産性向上を促す設備等投資促進税制の創設、中小企業投資促進税制の改正、中小企業者等の少額原価償却資産の取得価額の損金算入の特例延長、研究開発税制の拡充などを計画するほかに、事業再編を促進するための税制措置(案)、競争力強化法(案)に基づく事業再編や中小企業の事業再生に係る登録免許税の軽減措置の創設、ベンチャー投資促進税制の創設、企業収益の向上が賃金上昇・雇用拡大につながり好循環の実現を目指すための所得拡大促進税制の見直し、拡充などを実施することを検討している。

この中で注目したいのが「民間研究開発投資を今後3年以内にGDP 比で世界一に復活する」という目標を掲げて研究開発税制を検討し、試験研究費の増加割合に応じて税額控除割合が高くなる仕組みを取り入れようとしていることである。

データは少し古いが1997~2010年の期間の統計で、研究開発費のGDP 比の世界トップ5はイスラエル(4.40)、フィンランド(3.88)、韓国(3.74)、スウェーデン(3.40)、日本(3.36)となっている。日本がモノづくりで世界に貢献し、国を栄えさせるためには、新しい技術・製品を開発し続けなければならない。シーズ・ニーズに対応した研究開発を実施して、新商品を開発して行かなければならない。そのため、研究開発費が法人税額から最大30%控除される、という控除割合の増加は、民間企業にとって大きなインセンティブとなる。

過日、京都府内の中小企業およそ100社が集まる「京都試作ネット」の創設メンバーから話をうかがった。特に強く印象に残ったのが、試作開発の集積基地を京都に育てていこうという強い想いだ。今日の飯、明日の飯よりも明後日の飯の種を育てるため、1200年にわたって継承してきた文化と歴史、伝統工芸の技をベースに、新しいビジネスモデルを創設しようとしている。メンバーは経営の神様、ピーター・F・ドラッカーの『現代の経営』に学んだ。企業経営の基本は、マーケティングとイノベーションで、“顧客の創造”が最も重要であると学び、その実践方法について論議を重ねる中で、京都試作ネットを13年前に立ち上げている。

事業を継続するためには設備も大切だが、イノベーションやマーケティング、そしてなによりも“顧客の創造”がなければ発展はない。そういう意味で国は制度や仕組みを創設するだけではなく、「飯の種をどのように創り出していくのか」という課題に対して明確な戦略と指針を打ち出さなければならない。「日本には明日がある」という、夢と希望にあふれた国にするためにも、それを実現させる勇気を国民1人ひとりが持てるような変化を今年は期待したい。

LINEで送る
Pocket

タグ

  • タグはまだ登録されていません。

関連記事

  • 関連記事はありません。

視点記事一覧はこちらから