特集

Webを活用した企業価値創造の取り組み

売り手視点を捨てた設計者視点の Webサイトで、新規問い合わせが増加

「試作板金加工.com」と実証加工に対応した見せる工場「板金体感工場」の連携を目指す

株式会社 深沢製作所

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画像:ベンディングロボットシステムASTRO-100NT(マニプレーター付き)。中曲げや切り起こしなど、人手では難度が高く時間がかかる製品は、できるだけASTROで加工するベンディングロボットシステムASTRO-100NT(マニプレーター付き)。中曲げや切り起こしなど、人手では難度が高く時間がかかる製品は、できるだけASTROで加工する

実証加工に対応した「板金体感工場」

㈱深沢製作所は、1968年の設立以来、大手メーカー向けの試作・量産試作・量産の仕事に取り組んできた。

しかしこれらの得意先は、バブル崩壊後の1990年代から生産のグローバル化を推進。2001年のITバブル崩壊後は、設計・開発部門と製造部門を丸ごと海外へシフトするような大胆な“リエンジニアリング”を進め、調達先の集中と選択を強化した。それまで同社が手がけてきた仕事も、量産を中心に海外へとシフトしていった。

生産のグローバル化に対応するために栗原社長が採った方策は多岐にわたる。中でもユニークなのは、2007年に現在地(神奈川県足柄上郡)に建設した新工場。この工場は「板金体感工場」というコンセプトをもち、得意先だけでなく、海外メディアや同業者にも積極的に公開している。

代表取締役の栗原正雄氏は「見せる工場―工場のショールーム化を目指しています。引合いをいただいたお客さまには、できるだけ当社の工場を見学していただき、モノづくりの現場をご覧に入れます。また、製品ショールームのスペースでは、加工製品に実際に触れていただきます。また、見学前に製品データをお預かりできれば、工場見学中に実証加工を行い、見学後には加工提案を行うとともに完成品を持ち帰っていただくこともできます」と語っている。

新工場建設に合わせて、ベンディングロボットシステムASTRO-100NT(マニプレーター付き)を導入。99工程まで曲げられる独自仕様で、ロットを問わず、中曲げや切り起こしなど、人手で加工するには難度が高く時間がかかる製品は、コストダウンを実現するためにASTROで加工している。今年は大型化が進む電機製品の曲げやステップベンド加工に対応するため、ベンディングマシンHDS-1303NTを導入。1,000種類以上の金型を保有するパンチングマシンEM-255NTのほか、デジタル電動サーボプレスSDE-3030も保有しており、試作だけでなく型化・小規模量産までトータルで対応できることを見学者にPRしている。

また、3次元CADを導入して得意先メーカーと共通のプラットフォームを構築し、高い設計力・提案力を備えているだけでなく、コーヒー焙煎機やデザイン性の高いアタッシュケースといった自社製品も開発している。

2007年に現在地へ移転してからは、Webサイトをリニューアル。2012年と2013年にはドイツ・ハノーバー見本市会場で開催された「ハノーバーメッセ」にも出展した。また、異業種交流会や従来からのネットワークを活かして得意先を拡大していった。

こうした様々な取り組みを続けてきた結果、リーマンショック前は20~30社だった得意先が現在では100社前後まで増えた。

画像:代表取締役の栗原正雄氏代表取締役の栗原正雄氏

新規開拓を目指しWebサイトをリニューアル

こうした取り組みと並行して栗原社長が採った方策のひとつが、Webサイトの充実によるインターネット上での情報公開と認知度向上だった。工場移転後には、サイト上で会社紹介の動画を公開。それとともに具体的な加工サンプルを提示して、提案型生産設計、多品種少量生産から大量生産まで対応できる生産体制、全社一丸となった品質管理体制、人材教育体制などをPRした。これまでのようにただWebサイトを制作・公開するのではなく、検索エンジン上で同社の技術を必要としてくれる設計者の目にとまるように、SEO(検索エンジン最適化)対策によって検索結果の上位に表示されるような取り組みも行った結果、新規の問い合わせが入ってくるようになった。その中には大手重電メーカーからの引合いもあり、「Webが新規開拓のツールになるという実感を得た」(栗原社長)という。

画像:2013年12月に公開した「試作板金加工.com」(左)と同社が編集・制作した「試作板金設計技術ハンドブック」(右)。ともに、これまで培った技術を積極的に公開、無償で希望者に提供している2013年12月に公開した「試作板金加工.com」(左)と同社が編集・制作した「試作板金設計技術ハンドブック」(右)。ともに、これまで培った技術を積極的に公開、無償で希望者に提供している

つづきは本誌2014年10月号でご購読下さい。

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