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お客さまの研究開発インフラ―京都試作ネット

京都を試作加工の集積地に

京都試作ネット 相談役/京都試作センター(株) 代表取締役/(株)最上インクス 代表取締役会長 鈴木 三朗 氏

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画像:京都試作ネットは、幕張メッセで開催された「CEATEC JAPAN 2013」 にも出展京都試作ネットは、幕張メッセで開催された「CEATEC JAPAN 2013」にも出展

京都試作ネットは、京都府に所在する機械金属関連の中小企業10社が共同で立ち上げた、試作加工に特化した中小製造業連携。設立13年目を迎えた現在、参加企業は100社程度まで増え、各メーカーから寄せられる試作依頼への対応や産官学による合同企画を行うなど多方面に活躍の場を拡げている。本稿では同ネットの活動内容などを紹介するとともに、同ネットの仕掛け人であり、初代の代表を務めた(現在は相談役)㈱最さいじょう上インクスの代表取締役会長・鈴木三朗氏に話を聞いた。

試作加工に特化した「京都試作ネット」

設立13年目を迎え、最近では中小製造業連携のモデルケースとして、マスコミなどにたびたび紹介される「京都試作ネット」。同ネットは、「顧客の思いを素早く形に変える」をコンセプトに、2001年7月に京都府南部に所在する機械金属関連の中小企業10社が共同で立ち上げた「試作に特化したソリューション提供サービス」を目指す中小製造業連携である。

設立の発端は、京都機械金属中小企業青年連絡会(京都機青連)に集まったモノづくり企業の若い経営者の中で、企業経営はどうあるべきか、と真剣に悩むメンバーが集まり、マネジメントの神様と呼ばれるピーター・F・ドラッカーの『現代の経営』を教科書にした勉強会をスタートしたことだった。

この勉強会を通じて、企業経営の基本はマーケティングとイノベーションであり、「顧客の創造」が最も重要であることを学び、その実践方法について論議を重ね、陳腐化する事業の再定義を行い、強みを活かした新たな経営を模索していった。IT技術の革新によって物理的空間が狭まる中で、インターネットを活用した新たな顧客創造の仕組みづくりに挑戦、京都府や中小企業支援機関である「京都産業21」からも支援を受け、試作加工に特化し、ソリューション提供を目的としたモノづくり企業ネットワークを構築することとなった。そして、

●開発者に、期待を超える試作品をどこよりも速く提供すること。

●試作発注者の手間を省くこと。

―を事業の柱とし、

●商品開発初期段階から顧客と一緒に参画、加工業者 からの提案をし、顧客の開発の効率化を図る。

●企業連合で知恵を出し合って創発し、顧客にソリュー ションを提供し、新しい価値を創造する。

●試作という高度なモノづくりを通じて、それに携わる 人々に人としての成長の機会を提供する。

画像:京都試作ネット・初代会長の鈴木三朗氏京都試作ネット・初代会長の鈴木三朗氏

京都を試作加工の集積地に

京都試作ネットは、「コスト」ではなく、開発段階で最も重要視される「スピード」をプライオリティの第一に置き、顧客からの相談、問い合わせには、「2時間レスポンス」を掲げている。

その仕組みは、顧客が試作ネットのWebサイトの入力フォームやメール、FAXで試作を依頼すると、即座に当番企業の担当者にメールとして配信される。担当者は、依頼された内容に応じてメンバー企業の中から最適な企業を選定し、依頼内容を連絡、2時間以内に見積りを返す。その際に、即答ができないものについては再度、メンバーが打ち合わせを行い、調整を行って見積りを提出する。

「京都試作作ネット」は、「試作? そうだ京都に頼もう」をキャッチフレーズに、あくまでも“京都”にこだわった事業展開を進めている。1200年の歴史を持つ京都には、西陣織をはじめとした伝統工芸が脈々と受け継がれ、匠の技が残っている。そうした京都の歴史・風土、文化から継承されてきたモノづくりのDNAを受け継ぎ、将来は世界一の試作品製作集団を形成し、京都を一大「試作加工集積地」にすることを構想に掲げる。

モノづくり現場からの技術情報だけでなく、京都工芸繊維大学を中心とした各大学、京都府・京都市などの行政も加え、産官学の連携で「京都試作特区」の創設までも目指している。中小企業は、地域の生活と密接につながりながら事業を行っている。グローバル化は避けて通れないものの、中小企業が単独で海外へ出て行くのはリスクをともなう。これからも地域の文化や生活を守るためにも“地元”にとどまり、雇用の確保・拡大に努めることが大きな使命だと考えている。

もともと“試作”は新たな製品を生み出し、産業を見出すための重要な情報源。優秀な人材による総合的な知恵が“試作”を可能にする。“試作”というモノづくりを通じて、幅広い産業との連携を深め、次世代へと技術とともに文化の継承ができれば素晴らしい。すでに思いを同じくする仲間の輪は100社に及び、さらに参加希望の企業が増えており、大きな知恵が集合する一大「試作加工集積地」を目指し、地域に貢献している。

画像:「CEATEC JAPAN 2013」で展示した「燃料電池関連の試作品」。京都府に所在する電子部品メーカーと共同開発を行った「CEATEC JAPAN 2013」で展示した「燃料電池関連の試作品」。京都府に所在する電子部品メーカーと共同開発を行った

つづきは本誌2014年1月号でご購読下さい。

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