特報

米国製造業の復権を背景に盛況だった「FABTECH 2013」

主役はファイバーレーザ/オートメーション化で人件費を削減し競争力を備える

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画像:「FABTECH 2013」が開催された米国シカゴにあるマコーミックプレイスのグランドコンコース。開場前にもかかわらず来場者で混雑していた「FABTECH 2013」が開催された米国シカゴにあるマコーミックプレイスのグランドコンコース。開場前にもかかわらず来場者で混雑していた

好天にも恵まれ前回来場者数を14.7%上回る

11月中旬の米国シカゴ――第4木曜日(11月28日)の感謝祭を控え、一部のホテルやレストラン、お店はすでにクリスマスデコレーションで彩られ、賑やかな雰囲気を漂わせていた。ところが、筆者がシカゴ・オヘア国際空港へ到着した11月17日午後はシカゴ市のあるイリノイ州、その周辺のインディアナ州、オハイオ州といった米国中西部を、台風並みに発達した低気圧が通過。2時間ほどの間に竜巻・暴風・大雨で周辺地域に甚大な被害をもたらしていた。空港からダウンタウンへ向かう道路も一部が冠水して大混雑、いつもなら30 ~ 40分で到着するのに大変な時間を要してしまった。

ところが「FABTECH(ファブテック) 2013」が開会した18日は天候が回復、製造回帰で業績が上向いている米国板金業界を象徴するかのように青空が広がり、朝から多くの来場者が会場のマコーミックプレイス前で開場を待っていた。一般的な公共展では開場前にテープカットなどのセレモニーが行われるが、FABTECHではこれといったセレモニーもなく、10時の開場とともに来場者が次々と入場、入口付近は大変な混雑となった。

FABTECHに来る人々の大半は、設備購入などのビジネスを目的としているため、1日だけでは終わらずに会期中、毎日のように来場し、購入したい設備を出展機の中から探し、ブース内でじっくり見定める。

FABTECHは金属製造・溶接・成形・板金加工・成形加工などの最新技術を紹介する北米最大の国際見本市。シカゴでは2年ごとの奇数年に開催される。主催者は米国板金製造者協会(FMA:Fabricators & ManufacturesAssociation)、米国溶接協会(AWS:American WeldingSociety)、米国金属プレス加工業者協会(PMA:PrecisionMetalforming Association)、米国生産技術者協会(SME:Society of Manufacturing Engineers)などとなっている。

今回のFABTECHの展示面積は65万平方フィート(約6万m2)と前回2011年比で24.5%も増加。この広大な展示会場に、1,573社・団体の出展者(同21%増)が板金加工機械・プレス・切断機・溶接機・溶接ロボット・金型・周辺機器のほか、CAD/CAM・生産管理システムなどのソフトウエアを出展した。

主催者は開催前、来場者数を前回と同等の3万5,000人程度と見込んでいた。しかし、最終的な来場者数は4万667人と、前回を14.7%も上回った。

画像:ファイバーレーザマシンにマニプレータや棚を設備して自動化・無人化を図る傾向が強まっている。写真はNorthstar Metal Products, Inc.(イリノイ州)に設備されたファイバーレーザマシンFOL-3015AJ(4kW)と自動棚ASLUL-300FOL-AJファイバーレーザマシンにマニプレータや棚を設備して自動化・無人化を図る傾向が強まっている。写真はNorthstar Metal Products, Inc.(イリノイ州)に設備されたファイバーレーザマシンFOL-3015AJ(4kW)と自動棚ASLUL-300FOL-AJ

“Made in USA”が復活

2011年頃から顕著になってきた海外――とりわけ中国の人件費高騰、他の先進諸国と比べても安いエネルギーコストを実現するシェールガス革命への期待、さらには知的財産権保護や政治的な緊張にともなうカントリーリスク回避の動きなどが、米国内への製造回帰(リショアリング)――“Made inUSA”の復活につながっている。

このことは米国を取り巻くカナダ、メキシコの経済活動にも多大な影響を与えている。特にカナダ・ケベック州など5大湖周辺の地域では、これまで米国から流れてきた仕事が経済を支えてきたが、人件費の高いカナダから製造回帰で米国へ仕事がもどってしまったことで、カナダの製造業が大きく落ち込んでいる。

その一方で人件費が米国に比べて相対的に安価なメキシコなどは、米国からの仕事が増え、板金業界も活況が続いている。これによって北米3カ国の中でも好調な米国・メキシコに対して、カナダは仕事量が一部を除き激減しており、明暗がはっきりしていた。その一方で「財政の崖」問題から連邦政府は、国防・宇宙開発予算を大幅に削減。これまで米国の製造業を支えてきた国防・宇宙産業などが減速し、米国製造業のリーディング産業は変化しつつある。現在は自動車、建設機械、農業機械、シェールガス関連の化学産業をはじめ、世界の人口増大にともないニーズが高まっている医療機器、食の安全・安心を担保する食品機械や厨房機器などの業界が比較的安定して需要を拡大している。こうした業種・業界を中心に、米国の板金製造業界も順調に業績を拡大している。

画像:FABTECH 2013でアマダが発表した新型ファイバーレーザマシンENSIS-3015AJFABTECH 2013でアマダが発表した新型ファイバーレーザマシンENSIS-3015AJ

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