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スマートファクトリー元年

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10月、11月は大規模な金属加工機械の国際見本市が開催される時期。今年も板金加工に関わりの深い世界最大の国際板金加工見本市「EuroBLECH(ユーロブレッヒ) 2014」が10月21日から25日まで、ドイツ・ハノーバー国際見本市会場で、国内では「第27回日本国際工作機械見本市」(JIMTOF 2014)が10月30日から11月4日まで、東京ビッグサイトで開催された。

「EuroBLECH 2014」は、世界38カ国から過去最多の1,573社が出展した。同展は板金加工業界最大の見本市であり、業界の景気動向と技術動向を示すバロメーターといわれている。今回は出展者数で5%、床面積で3%、前回を上回ったことからも、板金業界の景気が世界的に好調に推移し、明るい景気見通しにあるということを示している。

一方、「JIMTOF 2014」は切削工作機械を中心とした見本市で、欧州のEMO、米国のIMTS、中国のCIMTと並んで世界4大工作機械見本市といわれている。今回は「モノづくりDNAを未来へ、世界へ」というテーマで開催され、世界25カ国・地域から865社が出展した。出展者数は前回815社を6%上回った。

日本の工作機械受注額は7カ月連続して1,200億円を突破するとともに、9月の受注額が6年4カ月ぶりに1,300億円台を確保、9月までの暦年受注総額は1兆円超えを達成、このままの数字で推移すれば1兆4,000億円超えは確実で、過去2番目の受注額が確実視されている。国内の設備投資が「生産性向上設備投資促進税制」や「ものづくり補助金」など政府の成長戦略による刺激策で活発化していることに加え、米国を中心とした旺盛な外需が支えている。

しかし、マクロ経済は中東やロシア情勢の緊張、エボラ出血熱の拡大、中国の不動産バブル崩壊の兆しなど、様々な要因から各国で下ぶれする気配が現れており、必ずしも好調とはいえなくなっている。それだけに見本市へ来場する世界のユーザーの関心が、どこにあるのかが注目されていた。

こうした中でひと際目立ったのが、モノづくりとICT(Information and Communication Technology:情報通信技術)の融合によって、どこででも、誰でも、手軽にモノづくりに参加できる環境の整備が進んできたことだ。「モノのインターネット」(Internet of Things:IoT)とエンジニアリング技術をドッキングした「スマートファクトリー」構築を目指すドイツ連邦政府は、フォルクスワーゲンやシーメンスなどの民間企業や大学・研究所などとの産官学連携で進める研究開発プロジェクト「Industrie 4.0」の開発を進め、欧州企業全体が米国・中国などに対抗して、これをデファクトスタンダード化する動きが顕著になっている。EuroBLECHでは、タブレット端末をユビキタス端末として活用することで、モノづくりプロセスの可視化、遠隔サポートに活用する事例が紹介された。

来場者の関心は、機械単体の性能もさることながら、全体最適の中での効率化、ムダの排除を志向する傾向が強まっているように感じられた。欧州でも研究され、導入が進むトヨタ生産方式(JIT生産方式、リーン生産方式)では、工場で発生するムダ取りの本質は動作と運搬、滞留にある、としてきただけに、モノと情報が一元管理され、可視化を進めることができる「Industrie 4.0」はスマートファクトリー構築の格好のツールと考えられている。

JIMTOFでも、「Industrie 4.0」そのものに言及する出展こそなかったものの、「IoT」とモノづくりの融合を目指す試みを各社が実演した。モノづくりとICTの本格的な融合が始まった。2014年の締め月にあたり、筆者は今年を「スマートファクトリー元年」と位置づけたい。

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