板金論壇

「背伸びは長続きしない」といわれるが、時には「冒険」も大事

『Sheetmetal ましん&そふと』編集主幹 石川 紀夫

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慎重になりすぎる経営者が増える

日々、いろいろな経営者にお会いするが、最近お会いした何人かの経営者から「身の丈にあった経営を心がけたい」というフレーズを何回か聞いた。無理をせず、実力相応の経営を心がけたいというお気持ちなのだろう。ある経営者は「社長に就任するまでの専務時代は、身の程知らずというか、かなり背伸びをしたし、社長を説き伏せて冒険もしました。結果オーライではありませんが、そのことが当社の発展を支えたことも事実です。しかし、代表取締役ともなると、もう冒険はできません。社員やその家族、自己資金の比率などを考えるようになりました」と、必ずしも納得していないような歯切れの悪い口調で語っていた。同様に多くの経営者が同じような思いをしながら成長されてきたのだと思う。

歌舞伎役者が切る”見得”

「身の丈にあった」の対照的な意味でよく使われる「背伸びをする」という言葉だが、ここで紹介した経営者の方もそうであったように、社長就任までは、背伸びをして仕事をされた時期があったのだと思う。

歌舞伎の世界では「見得を切る」ということがよくいわれる。「見得」とは、歌舞伎役者の感情、または動作の高揚が頂点に達したとき、一瞬動きを止めて一定の姿勢をとり、眼力を効かす演技のことで、際立つような動作をするという意味の「切る」を組み合わせて「見得を切る」といわれるようになったという。それが嵩じて、一般的には「自分を誇示するような態度・言動をする」という意味で「見得を切る」という言葉が使われる。いわば、若い頃の経営者は時と場合によって、しばしば「見得を切る」ことがあり、それが「背伸び」につながっていったのではないのだろうか。

しかし、背伸びをすることで、身の丈がその分”伸びる”ことも事実。無理して背伸びした分、実際の身の丈も伸びていた、ということもある。そういう意味で、若い時には思いきり背伸びをして「見得を切る」ことも大切ではないだろうか。その結果、事業の発展・拡大につながるものである。

つづきは本誌2014年12月号でご購読下さい。

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