Interview

3度のM&Aで製品開発から試作・量産までの一貫体制を構築

Webサービス「クラウドファンディング」で自社製品をリリース

株式会社 ニットー 代表取締役 藤澤 秀行 さん

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画像:3次元CAD/CAMで作成した「くるみる」の回転アームの3次元モデル3次元CAD/CAMで作成した「くるみる」の回転アームの3次元モデル

(株)ニットーは1967年の創業以来、自動車や電機向けの金型製造を手がけてきた。2004年以降は、事業継続が困難となっていた量産プレス加工企業(2004年)、アルミの板金・溶接を手がける企業(2005年)、厚板のプレス加工企業(2008年)を次々とM&Aすることにより、失われようとしている加工技術・ノウハウ・得意先を継承するとともに、急速に事業分野を拡大。設計~試作~試作品検証~量産検討~金型製作~量産品検証~品質管理~量産までトータルで対応できる体制を構築するとともに、総合力に裏づけられた製品開発力を身につけ、得意先メーカーのパートナー企業として存在感を高めてきた。10年間で従業員数、売上高は約3倍に拡大。2012年からは自社製品の企画~開発~製造~販売にも取り組みはじめ、「クラウドファンディング」や「クラウドソーシング」といったWebサービスを駆使するなど、中小製造業の自社製品開発の新たなモデルを提示している。藤澤社長はFacebookなどのSNSを活用した異業種連携や、「全日本製造業コマ大戦」の運営にも携わり、中小製造業の活性化にも意欲的に取り組んでいる。

画像:代表取締役 藤澤 秀行氏代表取締役 藤澤 秀行氏

藤澤秀行(以下、姓のみ) はじめから戦略的にM&Aを展開していったわけではありませんでした。最初にM&Aした企業は量産プレス部品を生産している企業で、当社もプレス金型を納めていました。高齢の社長が体調を崩して入院し、事業を引き継いでほしいと話を持ちかけられましたが、この企業には1億円の負債があり、事業を引き継げばそれもついてくる―当時専務だった私は、近い将来ニットーを継承する立場として、M&Aに反対でした。当時社長だった父と2カ月ちかくにわたって話し合い、最終的には「仲間を見捨てるわけにはいかない」と負債を肩代わりして、1円でのM&Aを決断しました。

―当初は意に沿わないM&Aだったとのことですが、どんな効果がありましたか。

藤澤 M&Aをした相手企業の社員は雇用が守られる。そこのお客さまは、従来どおりの取引を継続できる。前の経営者は、負債や従業員に対する責任から解放され、安心して療養できる―そして当社にとっても、このM&Aが正解だったとすぐに気がつきました。ちょうどその頃、当社は事業拡大を目指そうとしている時期でしたが、自社のリソースだけで事にあたろうとすると、技術力を高め、設備投資をして、新規得意先を開拓するなど、長い年月と投資が必要になります。M&Aで1億円という負債を新たに背負うことになり、当初は途方に暮れましたが、当社にはない高い技術・ノウハウ、お客さまを短期間で獲得できたことは、金銭ではあがなえない大きなメリットでした。

画像:2012年にリリースした自社製品第1弾「iPhone Trick Cover」(左)/「iPhone Trick Cover」の開発にあたり、クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」に掲載することで、資金調達とともにマーケティング、プロモーションも行った(右)2012年にリリースした自社製品第1弾「iPhone Trick Cover」(左)/「iPhone Trick Cover」の開発にあたり、クラウドファンディングサイト「CAMPFIRE」に掲載することで、資金調達とともにマーケティング、プロモーションも行った(右)

―その手応えが2社目、3社目のM&Aにつながっていくのですね。

藤澤 2005年には、業務用空調機器関連のアルミの板金・溶接を手がける企業をグループ化しました。この企業は高齢化が進み、廃業しようという段階で、当社からM&Aを提案しました。2008年には自動車部品搬送用パレットなど、厚板のプレス部品を手がける企業をグループ化しました。どちらも当社とは異なる分野の仕事を手がけている企業です。今では、失われようとしている技術を継承していくことの大切さを強く認識しています。

つづきは本誌2014年12月号でご購読下さい。

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