板金業界のグローバル化を考える

国内に留まってもグローバル感覚とマーケティングは必須

合同会社 Yサポート 代表 山元 証(あかし) さん

LINEで送る
Pocket

1985年のプラザ合意以降の長期にわたる円高と、1989年のベルリンの壁崩壊による東西冷戦構造の終焉によるメガコンペティション(大競争時代)の到来によって、日本の製造業もグローバル化に対応するため、海外生産移転を進めるようになった。経済産業省の統計をみても、製造業の海外生産比率は1999年以降、右肩上がりで伸びている。

多品種少量・変種変量の生産形態に対応する板金業界も、生産コストを低減するためというよりも、適地適産を推進する発注元の意向に応じるかたちで、グローバル化への対応を求められてきた。とりわけ、大手メーカーがサプライチェーンの見直しを進めたことで、2000年以降は海外へ進出する板金サプライヤーも目立ってきた。

新興国のローカルサプライヤーは、人件費の高騰や人手不足も重なって、2010年以降は加工設備・加工技術ともに日系板金サプライヤーと遜色ないレベルに達している。さらに台湾・韓国のように国内市場規模が小さい国のサプライヤーは国際化が大前提で、日米欧中の市場開拓に積極的に取り組んでいる。日本の板金サプライヤーが日本国内に留まるにしても、これからのライバルは国内の同業他社だけでなく、台湾・韓国・中国・タイなど海外の同業他社とも競合する状況が現実になろうとしている。

こうした状況を踏まえ、小誌ではシリーズ「板金業界のグローバル化を考える」と題し、海外へ工場進出してアジア内需を取り込むなど、グローバル感覚豊かな事業展開を行っている板金企業を取材して、グローバル化への対応を紹介していく。第1回目となる今回は、精密プレス加工企業・山元(株)の専務取締役として中国・香港・タイへの工場進出に貢献したのち、2013年に独立、製造業向けビジネスサポート・コンサルティング会社、合同会社Yサポートを立ち上げた山元証あかし氏を取材。中小製造業のグローバル化への対応について話を聞いた。

これからの海外進出には慎重な分析が不可欠

画像:合同会社Yサポート・代表の山元証氏合同会社Yサポート・代表の山元証氏

「中小製造業が海外へ進出して成功する事例というのは、これまでは大手メーカーの海外生産シフトという時流に乗っていったケースが多かった。しかし大手メーカーの海外生産シフトがある程度進み、新興国の人件費が上昇している現状を考えると、これからは自社の財務体質をよく検討して、投資を回収できる見込みがあるかきちんと計算してから出て行くべき。今のところ、そこまで十分に検討できていない限りは、海外進出はあまりおすすめしていません」。

山元証氏は慶応義塾大学卒業後、大手デパートに4年間勤めたのち、1982年に親族が経営する精密プレス加工企業・山元(株)に入社し、専務取締役に就任。31年間にわたって同社の経営を支え、世界シェア13%を獲得する携帯電話向けオリジナル金属バネの開発や、中国・香港・タイへの工場進出に貢献してきた。

2013年に独立し、「日本の町工場を元気にする!」をコンセプトに、製造業のビジネスサポートを行う合同会社Yサポートを設立。海外進出に取り組んだ当時の体験を活かし、投資とリターンの係数を独自に作成。SWOT分析などを用い、当該国の為替相場や経済成長率、ステークホルダーとの関係、労働コストの上昇、政情・治安、インフラ整備などの項目を指数化して、キャッシュフローからみた経営判断を行うための手法を、講演会などで発表している。

つづきは本誌2014年11月号でご購読下さい。

LINEで送る
Pocket

タグ

  • タグはまだ登録されていません。

関連記事

  • 関連記事はありません。

板金業界のグローバル化を考える記事一覧はこちらから